年の瀬を迎えて心配な出来事が続いている。11月末に韓国で口蹄疫が発生し、大量の豚が殺処分された。一方、島根県の養鶏場で鳥インフルエンザの感染が確認され、約2万3000羽の鶏が殺処分されることになった。畜産業者にとってはいずれも最も恐ろしい家畜の伝染病である。感染力が強く、被害は爆発的に拡大しがちだ。記憶に新しいのが、宮崎県を襲った口蹄疫禍である。
今年4月に宮崎県で口蹄疫が発生し、猛威をふるった。県や国の対策は後手に回り、約29万頭もの牛や豚が殺処分される未曾有の事態となった。被害が集中した川南町など県東部五町では、牛や豚の姿が完全に消えた。8月末にやっと終息宣言が出され、農家は徐々に畜産を再開している。その矢先の韓国での発生である。畜産農家はウイルスの侵入を阻止せねばと防疫対策に懸命である。
そんな緊迫した状況下の宮崎県で、ある闘いが始まろうとしている。12月9日告示の県知事選挙である。宮崎を「どげんかせんといかん」と訴えて知事に就任しながら、わずか在任1期で「県知事としての限界を感じた」として、退任表明した東国原英夫知事の後任を選ぶものだ。絶大な人気を誇る知事の直後はやりにくいと誰もが思うものなのか、手をあげる人が1人しかおらず、一時は無投票による新人知事の誕生という仰天の事態になりかねなかった。手をあげたのは、東国原知事の後継者として出馬表明した河野俊嗣前副知事(総務省出身)だ。
選挙によらない新人知事の誕生という民主主義の放棄ともいうべき事態は、何とか避けられることになった。告示直前の11月29日に共産党の津島忠勝県委員長が出馬を表明したからだ。といっても、民主党県連と自民党県連が前副知事を相乗り支援するため、選挙戦が盛り上がるとは思えない。副知事からの昇格が、事実上、決まったようなものだ。