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「許せない。法律の是非だけで判断すべきことではない」(山本信夫・日本薬剤師会副会長)。保険調剤の支払いで患者が自己負担するぶんに、ドラッグストアなどが発行するポイントカードのポイントはつけてよいのか──。この、いわゆる「調剤ポイント」の付与が物議を醸している。
今年9月頃から大手ドラッグストアが相次ぎ調剤ポイントのサービスを開始すると、日本薬剤師会や日本保険薬局協会が反対の立場を表明。「医療は、ポイントで実質値引きし価格競争するのではなく、質の向上で勝負すべきもの」(山本副会長)と怒り心頭だ。
それでもサービスがなくならないのは、「ポイントをつけること自体がただちに法律違反になるわけではない」(厚生労働省)からだ。
規定上、保険調剤の支払いにポイントを充てて減免することは認められないとされる。しかし、日用品といった保険調剤以外の商品に充てることは問題ないから、これらを扱うドラッグストアなどには、顧客を囲い込めるメリットがある。
今、ドラッグストアは調剤併設型の店舗を拡大している。調剤はあらゆる病気に対応できねばならず、在庫過多になりがち。調剤過誤を起こさないためのシステム投資や人件費の高い薬剤師も必要だ。「現状の処方箋枚数では採算が合わないところもまだまだあるだろう」(業界関係者)。
とはいえ、調剤はうまくいけば単独事業で営業利益率5~6%が見込め、ドラッグストアの収益の柱になりうる事業だという。患者にとっても“かかりつけ薬局”を決めるきっかけになれば、服薬指導などの徹底が望める。
そもそも、保険調剤でも支払いにクレジットカードを使えばそのポイントが付与されるのだから、調剤ポイントの付与だけを全面的に禁止するのは難しい。だからこそドラッグストアには、ポイントという起爆剤を使う一方で、最高レベルの医療が提供できる調剤を目指す責任がある。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)