「えっ!?どうしたの!?というか、どうしてここに!?」
私は驚きのあまり大きな声をあげた。ニーチェは驚いた様子もなく「アリサ、そこに回っているものはなんだ?」と店前にある、お茶がくるくると、かき混ぜられている透明なケースを指さした。
「ああ、これは抹茶だよ。こうやって回ることによって、沈殿しないようになってるんだよ。というか、どうしてここに?」
「マッチャ……?美味いのかそれは?一杯いただけるかな?」
「うん、いいけど二百五十円になりますよ」
「金を取るのか!?お前の奢りではないのか!?」
いきなりやって来て、私の質問にも答えず、なんなんだこいつは、と思ったが女将さんがニヤニヤと奥からこちらを見ており、痴話喧嘩かと思われるのも嫌なので、私はしぶしぶニーチェに抹茶を奢ることにした。
「いいけど……今回だけだからね」
私はカップに抹茶をついで、ニーチェに渡した。
「で、いきなりどうしたの?びっくりしたよ」
「この間、また必ず伺うと約束しただろう。その約束を果たしに今日来たのだ。あと、今日はお前を連れて行きたいところもあってな。超人についてレクチャーするのにうってつけの場所があるのだ」
「へえ……(わかったようなわからないような)ちなみにそれってどこ?」
「まあそう慌てるな。仕事は何時までだ?」
「あと、一時間くらいで終わるけど」
「わかった、ではそれまでこのベンチで待つとしよう」
ニーチェは店前のベンチに腰掛けると、ストローで抹茶をズズズッと音を立てて飲んだ。
「おおお!うんまああああ!こ、これはなかなか美味いな!ココアと競り合うくらいの美味さだ!いや、ココア越えかもしれん……こんな美味い飲み物があるのか!」
「そんなに美味しい?ならよかった、奢ったかいがあるよ。けど、ここ店前だから、待っててくれるならどっか他のとこで待っててよ」
「そうか、店前だと都合が悪いのか?」
「いや、都合が悪いことはないけど、ちょっと……」
「そうか、ならば終わったら連絡してくれ。これが番号だ」
そう言うとニーチェは電話番号が書かれた紙切れを差し出した。「スマホ持ってるんだ……」と言いかけたが、また話が長くなりそうなので「うん、わかった」と言って、私は店内に戻った。
私は、一時間後ニーチェを、初めて出会ったベンチまで迎えに行った。店で待ち合わせてもよかったのだが、女将さんがあれから「いいわね、若いって~」とひやかしてきたので、これ以上誤解を招くのもなんなので、迎えに行くことにした。
ニーチェはお店からすぐのところにあるベンチにおとなしく腰掛けていた。