これまでこの連載では、日本企業では生え抜き経営者では痛みを伴う変革は難しい傾向がある点を指摘し、しがらみのない客観的な視点をもつ外部からの「プロ経営者」が今の日本企業には必要であることを述べてきた。
ところで、これまで触れてきたよく知られた大物経営者だけでなく、あまり知られていない次の世代のプロ経営者が実は日本企業で数多く活躍していることご存じだろうか。
彼らがどのようにしてプロ経営者になっていったのかを知ることは、需要が逼迫しているプロ経営者を増やすこと、そして企業にとってはどのようにして社内で「プロ経営者」を育成するか、のヒントになるのではないと考える。
そこで、今回は、彼ら若いプロ経営者のインタビューを通して見えてきた、どのようにしてプロ経営者は「作られるか」について細かく見ていきたい。
「プロ経営者」は就職後、どんな道をたどるのか?
いわゆる「プロ経営者」にインタビューを行なったのは合計31名。彼らがプロ経営者として率いる会社は、必ずしも大企業ばかりではないが、「ヘンケル」「オフィス・デポ」「本間ゴルフ」「ロゼッタストーン」「楽天」「キンコーズ」「新生ファイナンシャル」「USEN」「弥生」「アクサダイレクト生命保険」「シーメンス」「バーニーズ」「あきんどスシロー」「デル」「マース」「マンパワーグループ」「ダイソン」「20世紀フォックス」「モルソン・クアーズ」など名の知れた企業も多く含まれている。
一般的に日本の上場企業の課長昇進の平均年齢は45歳前後だが、彼らの平均年齢も約45歳である。さて、これらプロ経営者は若くして経営者になるほどに傑出した人材だったのだろうか。31名のプロ経営者のプロファイルは以下の通りだ。
【新卒で入社した会社】
・外資系企業=13名
・日本企業=19名
〔内訳〕
・商社=6名
・コンサルティング会社=8名
・金融=6名
・メーカー他=12名
【MBA、留学経験】
・なし=10名
・MBA=19名
・留学=3名
【今の職に就くまでの転職回数】
・2社目=1名
・3社目=3名
・4社目=12名
・5社目=10名
・6社目=4名
・7社目=1名
・8社目=1名
新卒で入る会社に関して特段の偏りはない。MBAや留学経験をしている人は多いが、そうでない人も約3分の1おり、必須という訳ではない。また、今の職に就くまでの転職回数は平均4回強といったところで、これは、新卒以来1社だけに勤め続けている人にとってはかなり多いと感じるのではないだろうか。