──いわゆる農薬を使わずに病気や湿気にどう対処するんですか?

せとうちビオファーム代表の佐藤潤さん

「それは気合と根性です。土壌を健全にして、オリーブの木の生命力を強くする。また、ある程度は諦めるということも大事かもしれません」

 早速、佐藤さんがゾウムシを捕まえ、見せてくれた。

「こいつらは元々、イボタノキ(ネズミモチ)というモクセイ科の木を食べて細々と生きていたんです。それがたまたま小豆島に持ち込まれたオリーブと出会いまして。そのなかの有効成分に虜になってしまったんです」

 オリーブアナアキゾウムシはオリーブの天敵だ。この虫はオリーブに寄生し水管を食べ尽し、ついには木を枯らしてしまう。たまたまオリーブと出会う前までは名もないゾウムシだったが、今では立派な害虫だ。

「共存共栄できないかとトライしたこともあるんですが、その年は300本くらい枯らしました。内側に潜む幼虫を除去するためのみで削るのでこんな風に幹は荒々しくなってしまいます。これは戦った痕跡です。害虫対策も気合と根性。できるだけ早く発見して、いち早く幼虫や成虫を駆除するという人的駆除がメインです。さすがに不可能と言われていただけあって、できない理由は一杯あります」

オリーブの天敵のゾウムシ

 夏場になれば炎天下、朝から晩までピンセットを持って駆除作業に当たることもある。除草作業も薬を使えば簡単だが、もちろん手作業だ。昔は草刈り機が壊れるほど刈った、という除草作業はほぼ毎日行う。 

「自分は農薬が悪いとは思っていません。ただ、オーガニック栽培に挑戦することで、胸を張って『本当に自然のなかで育つオリーブがあるよ』って言いたいだけなんです」

 どれだけ手を尽くしてもゾウムシによって枯れてしまえばもう手の施しようがない。オリーブの木は固定資産だ。減価償却も終わらないうちに抜いてしまえばお金を捨てているのと同じ。今でも苦労の連続だ。

木に擬態しているため目視での害虫駆除は困難

「はじめのうちは戦う相手を間違えていた部分もありました」と佐藤さんは言う。「自然と闘っても勝てるわけがないんです。戦う相手は自然ではなく自分だったんです。うちでは慣行(従来の農法)のオリーブも栽培していますが、比べると慣行の畑は土が硬い。オーガニックの畑はふかふかしていますよ。歩くとすぐにわかります。でも、オーガニックは収量も少ないですし、作業は大変です」

 立ち並ぶ木々を眺めてオリーブの実がどれくらい絞れるのか尋ねてみた。

「この畑で3kgほどですね」

 単純計算でミッションという品種で仮に油分率が15%とすると、3kgのオリーブの実から搾ることができるオイルは450ccほど。一粒のオリーブから採れるオイルはほんの僅か。そこに1年間の労力と想いが凝縮しているのだ。