前回diamond.jp/articles/-/2253までは、上司が部下に指示を出す際の典型的な落とし穴について見てきた。
今回から2回にわたって、会議運営に関連する落とし穴について紹介していく。会議の生産性を上げることは、組織の生産性を上げることに直結するにもかかわらず、必ずしも生産的ではない会議が行われている企業は多い。ぜひヒントにしていただきたい。
会議編第1回目の今回は、「議論の脱線」による時間の浪費という落とし穴について紹介する。
【失敗例】営業企画室 戸塚氏のケース
「結局何のための議論だったのか」
菓子メーカーの営業管理室長、戸塚三樹夫は営業部内の会議の司会をしていた。出席者は営業部の主だった管理職だ。定例的な営業報告の後、今回の重要な議題「事務ミスを減らすにはどうするか」の議論となった。
冒頭で戸塚が、
■昨年の実績で誤発注や誤請求といった事務ミスが明らかにそれ以前と比べて増えており、営業損益ベースでも影響が出ている
■取扱商品数が一昨年以来急増しているのに対し、要員の手配や教育が追いついていない点が重要な原因か
といった順序で、資料で数値を示しながら説明をした。そしておもむろに皆を見渡して問いかけた。
「さて、これに対して効果的な打ち手を考えたいんだが、皆の意見を聞きたい」
すると大規模小売店担当の清水が口を開いた。
「最近の若手はどうも注意が散漫ですな。事務ミスに限らず、客先に行ってきてニーズを聞き取るという点でも、どうも抜け漏れが目立ちますよ。この間もね、うちのところの小田原君が、先方の指定配達時間が繰り上がったのを社内に伝達するのを忘れていたことがありましてね」
戸塚「清水さん、それも分かるが、ここでは、どうするかを考えてくださいよ」
清水「いや失礼。では、新人教育のプログラムに事務の基本を盛り込みましょうか」
岡崎「いま、新人研修では、どの程度その辺の内容を盛り込んでるんでしたっけ?」
それに対し、戸塚の秘書役で総務担当の蒲原が答えた。
「伝票の様式、記入マニュアルについて、各セクションのベテラン社員を講師役にして、一通りロールプレイをやっていますね」
清水「それだけじゃ足りないということかな」