本連載もいよいよ最終回。そこで、総まとめのケースとして、主張の根拠となる情報に疑義が呈されたケースを見ていく。
用意周到、完璧に作ったはずの企画・提案だったのに、実際のプレゼン時には周囲から思いがけない反応が噴出。自分の描いたシナリオ通りに進まなかった・・・という経験、あなたはしたことはないだろうか? 最終回の今回は、そういった失敗例を紹介する。
【失敗例】自信はあったのに反論が
「なぜ皆、同意してくれない・・・」
全国で流通業を展開しているP社のマーケティング部に勤務する霧島綾香は朝から緊張していた。今日はマーケティング本部長らが列席する新規事業企画会議において彼女の企画をプレゼンすることになっていたからだ。
綾香の企画案は、中堅化粧品会社のN社と組んで、プライベートブランド(PB)を展開するというものだ。たまたまN社に務める大学時代の友人がN社社長の御曹司という縁があり、彼からの相談がきっかけで、直属の上長である桑野の了承の下、事業企画を始めたものだ。説得力のあるプレゼンができれば、そのまま新しいビジネスが動き始めるかもしれない。旧友の期待にも応えられる。ワクワクする反面、いつもとは違う緊張感を感じていた。
新ビジネスの提案は今回が初めての綾香にとって、プレゼン資料作りは大変ではあったが、上長や先輩に助言を仰いだり、ビジネス書を買って猛烈に勉強したりすることで、何とか自分なりに納得のいくものが仕上がった。
「市場の話、競合の話、自社の話・・・3C(Customer、Competitor、Company)の枠組みはそれなりに押さえて情報は集めたわ。ネットもかなり調べたし、想定ユーザーへのヒアリングもした。数字のシミュレーションもしっかりやった。ビジネスプランに盛り込む要素で大きな漏れはないはず」。綾香は反芻していた。
最終的なプレゼンの構成は以下のようなもので、ビジネスプランの教科書にあった最もオーソドックスなものを踏襲していた。
0)サマリー
・提案の骨子
・提案の背景と当社にとっての意味合い
1)高い市場の魅力度
・市場規模と成長の見込み
・競合の概況
2)実現可能かつ勝算ある戦略
・KSF(Key Success Factors)と、自社およびN社の優位性
・ビジネスモデル、N社との役割分担
・オペレーション、マーケティングの詳細
・必要となる経営資源とその目処
3)リスクとリターン
・期待リターン(財務面、非財務面)
・想定されるリスクとその対応
上長の桑野からも「オーディエンスがどう反応するか予想はつきにくいけど、よくまとめたとは思うよ」とのコメントをもらっていた。それはそれで励みにはなっていたが、「これなら絶対に大丈夫」との太鼓判まではいかなかった。