ドローダウンとは、資産の落ち込みのことを言います。
たとえば、100万円の資産が90万円に減ってしまった場合、ドローダウンは10%です。このドローダウンという言葉は、含み損だけでなく、高値からの目減りに対しても使います。
ドローダウンの設定が大事なのは、精神的なこともありますが、それによって選ぶべき投資戦略が変わってくるからです。
大きなドローダウンを許容できる人は、それだけ大きなリスクを背負えるので、よりアグレッシヴな投資戦略が選べます。
逆に、大きなドローダウンには耐えられないという人は、保守的で手堅い投資戦略を選ばなくてはなりません。
これはまさに「己を知る」作業です。
なぜ、最新の金融工学を駆使しても
何十倍になる運用ができないのか?
ところで私は2009年に、日本で初めてロボット(プログラム)が顧客の資金を運用する公募投資信託「カブロボファンド」を商品化しました。
このファンドの運用方針(つまりは投資戦略ですが)を決めるとき、最も苦心したことが「負けのレベルをどう設定するか」についてです。
自分の資金で投資するぶんには、途中でいくら減らそうが失おうが、すべては自己責任です。けれども他人様の資金を預かって運用するとなれば、話はまるで違ってきます。
いくらまでなら目減りが許されるのか、何連敗までなら許容されるのか、その上でどれだけの利益を目指すのか。
そうすると、必然的に、「ドローダウン」「連敗」「PF」を重視しないわけにはいきません。
幸いにして「カブロボファンド」はいまも利益を上げ続けており、荒れ相場でも底堅い運用をするファンドとして新聞に取り上げられたりもしています。
ときどき、「なぜ最新の金融工学を駆使しているのに、手堅い運用なのか?何倍にも何十倍にもなる運用はできないのか!?」と聞かれることがあります。
それは、「ロボットがその程度の実力である」ということではなく、ドローダウンを小さくするため、大きな連敗をしないために、リスクを抑えつつも手堅く勝ちを積み重ねる投資戦略を採用しているからにほかなりません。
投資をスタートする段階で、どこまでのドローダウンが統計的にあり得るかを推測し、どの程度の期間をかけて、どのくらいの利益が期待できるのかを納得していることが重要です。
その上で、想定された範囲内での運用が続いている限りは、投資戦略を信じて継続する。
投資戦略に基づいて運用するということは、つまりはそういうことなのです。