卒業に際して、社会の中でのポジション取りに固執するのであれば、銀行か商社を選んでいたと思います。それが世間の常識であったし、自分としてもそれでいいと思っていました。

 しかし、私の前に野村総合研究所という選択肢が現れました。私の卒論のテーマはコンピュータ・シミュレーションでした。そこで私は、数値的な解析力を売り物にしている野村総合研究所に入社したのです。なぜなら自分の原点canを刺激する新たなワクワクする可能性を見出したからです。

 ただ、当時の通念から言えば、あまり賢くない選択に見えたかもしれません。銀行か商社に就職したほうが、成功した就活に見えるからです。しかし私は躊躇しませんでした。と言うよりも、自分の好奇心を抑えられなかったのです。損得ではなく、「きっとそのほうがおもしろい」と思ったのです。加えて、「人と同じは嫌だ!」とも思いました。

 たとえ一つの方向は困難であったとしても、原点canに立ち返り、その気持ちに忠実に、新たな方向に歩いて、別の可能性を見つければいい。原点canを発揮する方向は決して一つではないのです。

テレビ局の仕事と
先生の原点canが同じ志向性

 もう1人の例を挙げましょう。テレビ局でプロデューサーとして、数々のヒット番組を手がけた方が、今は社会人材学舎で先生をしています。

 彼は、そもそも先生になりたかった、人を育成したかった人なのだと私は思っています。ムードメーカーで、人を喜ばせることが好きで、責任感が人一倍あって、お節介なほど人好きな性格です。

 まさに、そうした性格、持って生まれたいわば原点canが先生という職業には実に適していると思うのですが、同じ志向性が、テレビ番組のプロデューサーにも合っていたと考えられるのです。

 いい番組を作るためには、視聴者、学校で言えば生徒のような存在に何かおもしろいものを提供しよう、役に立つ知識や情報を提供したいという動機が必要だと思います。それができないと寂しくて死んでしまいかねない人です。そうした性格はテレビマンとしてチームを束ね、スタッフや専門家たちを動かしていく仕事に最適であると私は思います。