ヌレンザをさす橋本社長

 ヌレンザは、従来の傘のように防水スプレーなどで傘の表面をコーティングするのではなく、水をはじく高密度ポリエステル素材を福井の繊維メーカーとともに開発したことで、従来品とは比べ物にならない撥水性を実現した。しかし橋本さん曰く、ヌレンザはまだ完成形ではないらしい。

「今度は、水をはじく糸を作って傘を作りたいと考えていて。そうすれば、傘の色落ちもしにくくなり、さらに撥水効果が衰えにくい傘が作れると思っていますから」(橋本さん)

 福井洋傘の代名詞ともいえるヌレンザだが、橋本さんが「うちにヒット商品はない」と語るように、ヌレンザは同社の売上1位の商品ではない。

「社員にはヌレンザを売るな!と言っています。一過性にしたくはないんです」(橋本さん)

セラミックを編み込んだ晴雨兼用傘「なつめ」の生地

 最も売れているのは、「なつめ」というセラミックを編み込んでUVカット機能のある晴雨兼用の傘。実は福井洋傘、日本で初めて黒い日傘に着目したメーカーでもある。日傘と言えば「白」が当たり前だった平成に入ってすぐの時代に、橋本さんは黒い素材が紫外線をカットしやすいと知った。そこで黒の日傘を作ろうと決意したが、やはり周囲は反対。それでも諦めずに作り続けた結果、黒い日傘は主流になっている。

 そして黒い日傘が当たり前になった今、福井洋傘は生地にセラミックを織り込むことで紫外線を99.8%カットする技術を開発。黒以外の素材でも紫外線をカットできるようになった。

 ヌレンザにせよ、日傘にせよ、消費者がこんなのがほしいと口にする前に“一歩先の商品”を作ってしまう。それが「お客様の都合が第一」をモットーにする橋本さんの凄さなのだ。

 橋本さんには売り場でのこだわりがもう1つある。それは、傘売り場には商品を置いてもらわないこと。

「今、傘メーカーはどこも厳しい状態です。そこに私たちが出ていけば競争が激しくなり、お客様を奪い合うだけ。だから私は、自分の客は自分で作ってきました。なので、常に驚いてもらえるような商品を作り続けなければなりません。

 もちろん、そんな商品は儲かりませんよ。でも儲かる仕事は他の人にやってもらっていいんです。儲からないもの、売れないものは真似されませんから、結果的に生き残れるんです」(橋本さん)