今月上旬、OECDが3年に一度実施する「国際学習到達度調査」(PISA)の結果が発表され、改めて「日本の子どもの学力」が話題に上っている。「ゆとり教育」の見直しが進んだこともあり、日本の学力は前回よりも向上したが、ゆとり教育が始まる前の2000年の水準までは回復していない。「脱・ゆとり教育」路線は着実に進んでいるのだろうか? 子どもを育てる親や教育関係者に聞くと、新学習指導要領の完全実施を前に、いまだに「ゆとり思考」から抜け出し切れない教育現場の姿が浮かび上がってきた。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)

前回の“惨状”から一定の回復を実現
「脱・ゆとり教育」路線はPISAに奏功したか?

「ゆとり教育の問題点については様々な議論が出尽くした感があるが、やはりどんな議論より結果は雄弁だ。PISAのデータを見てそう感じた」(30代・私立学校教師)

 今月上旬、経済協力開発機構(OECD)が発表した「国際学習到達度調査」(PISA)の結果に、世界の教育現場から熱い視線が注がれた。

 世界の15歳の男女を対象に、「読解力」「数学的応用力」「科学的応用力」の3科目で義務教育の習得度を測る3年に一度のこの調査。2009年度、日本からは185校・約6000人がテストを受験した。日本の成績は、読解力8位、数学的応用力9位、科学的応用力5位という結果だった。3年前の2006年度調査時と比べて、全分野でランクアップしている。冒頭の教師のコメントは、このテスト結果を振り返ってのものだ。

 読者の多くは、「ゆとり教育のせいで、日本の子どもの学力が低下した」という話を、耳にしたことがあるだろう。とりわけ受験を控えた子どもを持つ親なら、誰しも気になる話題だ。

 一般に「ゆとり教育」と呼ばれる学習指導要領が完全施行されたのは、2002年からだ。それより前の2000年、日本のPISAテストの成績は、読解力8位、数学的応用力1位、科学的応用力2位だった。ところが、ゆとり教育が浸透した後の2006年調査では、読解力15位、数学的応用力10位、科学的応用力6位と、成績が急激にダウンしている。