永守社長が「残業ゼロ」を宣言
モーレツ職場は変えられるか?

 ハードワークで知られる日本電産の永守重信社長が「2020年までに残業ゼロを目指す」と、従来の企業イメージとは180度違うビジョンを示した。決算会見の場で、これまでの日本電産の代名詞と言われた「モーレツ」の言葉を挙げて「モーレツはもうウチにはない」と言い切り、働き方改革の説明に多くの時間を割いた。

 創業以来、朝8時から夜12時まで1日16時間、年365日働くことを自らに課した永守社長がこのような宣言をするのを耳にすると、正直「イメージが違うな」と感じる。しかし現実にも、日本電産はこれに近い企業に変身しつつあるようだ。

 実際、円高の逆風にもかかわらず今期は過去最高益の純利益1000億円台を実現できそうだと言う背景には、働き方改革で残業を従来から3割も減らしてきた実績がある。朝礼時に上司に申告して許可を得ないと残業ができない、仕事が残っていても定時を過ぎると「早く帰れ」と言われるなど、残業をなくす方向で指導を徹底したことで、プラスの効果が生まれたようだ。

 さて、私も経営コンサルタントとしての経験の中で、日本電産と同じチャレンジをした会社の事例をいくつも知っている。確かに、残業ゼロを目指すと経営にはコスト削減以上の大きな成果が出る。業務改革まで踏み込まないとそれが達成できないからだ。しかもそのためには、管理職が大変な努力をしなければいけなくなる。それはどのようなものか、簡単にまとめてみよう。

 残業ゼロ、つまり週5日労働で祝日や有休も一定レベル消化した上で、毎日8時間しか働かない。この場合、年間の労働時間は1800時間以下になる。一方で色々なデータがあるが、その中に「日本人の正社員は平均して2300時間以上働いている」という数字がある。

 その差が年間500時間以上だから、平均的な残業をしている正社員は毎週10時間、1日に直せば定時が午後6時のところ、毎日午後8時まで職場に残っていることになる。

職場環境や業務の構造を
変えるための「3つのチャレンジ」

 それを職場全体でゼロに持っていくことは可能なのだが、そのためには3つの大きなチャレンジが必要になる。業務の構造を変えること、会議を変えること、そして社員の意識を変えることの3つだ。これがなかなか、実際に変えるのは難しい。

 たとえば、始業の9時から夕方の17時まで顧客や関連部署からひっきりなしに電話がかかってくるような部署で、そのたびに業務が途切れて、結局17時以降でないとまとまった仕事ができないという業務の仕方では、残業はゼロにならない。