「モーレツ社員」は時代遅れ?
いや、海外ではもっと働いている
先月9月2日、安倍晋三首相が「働き方改革実現推進室」の開所式で「モーレツ社員の考え方が否定される日本にしていきたい」と発言し、話題となった。
実は約50年前、高度経済成長期の真っ只中でも、同じような動向があったのだ。
かつての日本は、大量生産・大量消費サイクルのなかで「モーレツ」な拡大主義を突き進み、様々な環境問題や社会問題が顕在化していた。そんななか、ロックや消費者運動や学生運動が盛り上がりを見せ、既成の価値観に対する反発が生まれた。その反発の風潮は、当時の富士ゼロックスのCM「モーレツからビューティフルへ」というキャッチフレーズに凝縮されている。
現在も、当時と変わらず様々な社会問題が顕在化している。それに加えて今の日本はデフレからの完全脱却が見えないというオマケつきだ。
しかし、そこで筆者は考えた。「モーレツ社員」は本当に悪なのだろうか。実は、働き方問題の真犯人は「モーレツ社員」ではなく、日本に根付いた「超非効率ワークによる長時間労働」ではないだろうか。
モーレツ社員と言えば、「サービス残業社会」の日本独自の文化と思われがちだが、他の先進国でも猛烈に働いている人々は多いのだ。筆者が先日出張した、アメリカ・シアトルにあるマイクロソフト本社で、新しいビジネスや経済を生み出しているプロフェッショナルたちもまた「モーレツ社員」だ。
モーレツに働く理由は明らかで、仕事がクビになることへのリスクヘッジと、キャリアやスキル向上にどん欲だからだ。彼らの特徴は、給与はもちろん、自らの地位を上げる努力を惜しまず、転職した場合の「市場価値」を高めていくことにも積極的。日本人よりも仕事やキャリアに対して“肉食系”でギラギラしているくらいだ。
タイトロープなグローバル社会で評価されるためには、無駄をなくし高い成果を出すために、モーレツ社員にならざるを得ないのだ。しかし日本では、ガラパゴス化がジワジワ崩壊し始めている中にあっても、のほほんと「日本式の無駄+非効率仕事法」文化を頑なに守り続けることで、安倍首相が懸念していた「モーレツ社員の大残業」を生み出しているのだ。