各社から新製品のリーダーも発売され、ようやくハード面でも出揃った感がある電子書籍。これでいよいよ、販売サイトやレンタルサイトも本格的に活気づいてくるだろう。
そんななか、登場したのが「朗読少女」という新しいコンテンツだ。その名の通り、読んで欲しい本を「乙葉しおり」という架空の少女が朗読してくれるiPhone・iPad用のアプリケーションだ。
朗読は人気声優の「ささきのぞみ」が担当し、2010年7月23日の発売開始からすでに40万ダウンロードされている。本のラインナップは、青空文庫を中心としたいわゆる著作権切れの作品をメインとしている。
活字離れが叫ばれているなか、「朗読少女」という親しみやすいキャラクターが古典文学を朗読することによって、気軽に小説に接することができる。耳から聞くことによって活字に対するアレルギーを失くし、小説の面白さを知るということは、非常に有意義であるように思う。
また、現代文学は読んでいても、「古典はちょっと」と敬遠している人にとっても、古典文学の名作に触れるよい機会ではないだろうか。
「朗読少女~Story Time Girl~」のアプリケーションは、永久に完全無料で使用可能となっており、「羅生門」を数分間無料視聴できる。ちなみに、「朗読少女」はそのまま使用できるため、コンテンツのみを追加購入するということになる。現在、350円で販売されている作品が大半を占めるが、アプリケーションを無料で使用できるということを考えると、かなり格安なのではないだろうか。
「朗読少女」の運営会社である「株式会社オトバンク」では、「朗読少女」の他にも、最近発行されたばかりの書籍をオーディオブック化して販売している。ちなみに第1位は、今年書籍がミリオンヒットとなった『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(ダイヤモンド社)だが、オーディオブック価格が1680円と、書籍価格と同額で販売されているのには驚かされた。
他社のオーディオブックは、1時間平均1500円~2000円で販売されている(同じ本での比較は難しいが)。それを基準に単純計算すると「もしドラ」の朗読時間が6時間40分であることから、1万2000円~1万5000円くらいで販売されていてもおかしくはない。近代文学のなかでは「石田衣良」氏の作品をはじめとした、多数のオーディオブックが、やはり書籍価格で販売されているのもうれしいところだ。
一般書籍と同等の価格で現代文学に触れることができるのは、目が不自由な人にとっても朗報といえる。ボランティアで朗読をして無料配布するにしても、著作権の関係上仕方なく古典文学がその大半を占めてしまうのが、現実ではないだろうか。
現代文学に触れたいと願う視覚障害者の方々のためにも、今回紹介したオーディオブックの認知度が広がり、普及してくれることを願って止まない。
(木村明夫)