現代の職場はストレスに溢れている。どうして働き盛りのビジネスマンが不眠、不安、疲労、うつを発症して、彼らはどうそれを克服したのか?7人のビジネスマンの実例から原因と治療法を探る。(週刊ダイヤモンド2012年7月28日号特集「不眠・不安・疲労  職場と家庭のうつ 全対策」より。*各ケースは実例の取材に基づきますが、個人を特定しないように内容の一部を改変しています)

【ケース1 不眠症】
連日3時まで眠れず
大事な書類でエラー

 時計の針は午前3時を回ろうとしていた。「駄目だ!眠れない!」。橋本武彦さん(仮名・44歳)は空のグラスに手を伸ばし、ウイスキーを注いだ。すでに4杯目。祈るようにして一気に飲み干した。

 酒の力でようやく眠りに落ちたのもつかの間、悪夢にうなされて何度も目が覚めた。仕事で大きなミスをして首になるという空恐ろしい夢だった。ぐっすり眠れないまま目覚まし音が無情に鳴った。

 商社マンの橋本さんは1年前に課長に昇進した。複数のプロジェクトと部下の管理も任されて業務の負荷は一気に増えた。大きなプロジェクトがちょうどヤマ場を迎えていたこともあり、終電で帰宅する日々が続いた。帰宅しても寝付けなかったり、途中で目が覚める日が増えるようになった。

 ある時期からは、ほぼ毎日寝付けなくなった。ちょうどこのころ、大きなプロジェクトの取引先の部長から理不尽な注文や嫌みを浴びせられることが悩みの種になっていた。

 布団に入るとその部長の顔が浮かんでイライラする。寝酒を飲むようになったが、1杯では眠れなくなり、日を追って2杯、3杯と量が増えた。朝になっても疲れが取れず、疲労感を引きずって出社した。

 連日寝付けなくなってから3カ月目、上司に怒鳴られた。大事な書類の数字を1桁間違って記入していたのだ。上司に「体調でも悪いのか」と尋ねられ、状況を打ち明けた。

 上司の言葉に従って受診すると、「不眠症」と診断された。まず酒をやめるよう指導され、睡眠薬が処方された。上司の計らいで業務量が少し抑えられ、残業を減らした。休日は仕事を持ち込まず、軽めの運動でストレスを発散するようにした。