戦略コンサルで新人が最初に食らう“最上級のダメ出し”とは?
「1つに絞るから、いちばん伝わる」
戦略コンサル、シリコンバレーの経営者、MBAホルダーetc、結果を出す人たちは何をやっているのか?
答えは、「伝える内容を1つに絞り込み、1メッセージで伝え、人を動かす」こと。
本連載は、プレゼン、会議、資料作成、面接、フィードバックなど、あらゆるビジネスシーンで一生役立つ「究極にシンプルな伝え方」の技術を解説するものだ。
世界最高峰のビジネススクール、INSEADでMBAを取得し、戦略コンサルのA.T.カーニーで活躍。現在は事業会社のCSO(最高戦略責任者)やCEO特別補佐を歴任しながら、大学教授という立場でも幅広く活躍する杉野幹人氏が語る。新刊『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』の著者でもある。

戦略コンサルで新人が最初に食らう“最上級のダメ出し”とは?Photo: Adobe Stock

サンドウィッチマンのコントに学ぶ「伝わる」ということ

「ちょっとなに言っているかわからない」

 サンドウィッチマンのコントでの台詞だ。伊達みきおさんが、まっとうなことをいろいろと伝える。観客にはみんな伝わっている。

 しかし、それを伝えられた富澤たけしさんだけは「ちょっとなに言っているか分からない」と言う。それに伊達さんが「わかるだろ」や「わかれよ」と突っ込む。笑いが溢れるところであり、わたしはこの場面が大好きだ。

 この場面では「伝わる」ということがなにかが垣間見られる。

 伝わるかは、どこまでいっても相手次第であり、自分ではなく相手が決めるということだ。

 自分がいろいろと伝えたところで、相手に伝わるかはわからないのだ。

戦略コンサルの最上級のダメ出しとは?

 この「ちょっとなに言っているかわからない」は、コントの世界だけで言われる言葉ではない。仕事や生活などの日常の会話の中でも、よく言われる言葉だ。

 大きく違うのは、サンドウィッチマンのコントの中であれば言われると笑いが溢れるが、仕事や生活などの日常の会話の中で言われると、緊張が溢れる点だ。言われた側にとっては自分の伝え方にダメ出しをされたことになるからだ。

 この緊張が溢れる方の「ちょっとなに言っているかわからない」は、戦略コンサルで、新人たちがもっとも受けるダメ出しの一つでもある。

 そのダメ出しを繰り返しもらっていると、「いろいろ言っているが、なにも言っていない」という最上級のダメ出しを受ける。わたしも例外ではなく、戦略コンサルで新人だったときに、このダメ出しを受けた。

「1メッセージにしろ」という戦略コンサルのレッドカード

 20年ほど前、戦略コンサルタントになって最初のプロジェクトでのことだった。わたしは作成した資料をマネージャーに説明した。説明を聞き終わったマネージャーは間を置かずに「杉野さん、ちょっとなに言っているかわからない」と言った。

 わたしは顔が赤くなり、背筋が凍った。挽回しようと、自分の考えをいろいろと補足して伝えた。

 すると、今度は「いろいろ言っているが、なにも言っていない」という謎解きような言葉を言われた。吐き気がした。こういう場合に次に告げられる言葉をわかっていたからだ。間もなく、続きの言葉が浴びせられた。

「1メッセージにしろ」

 この言葉は、新人コンサルタントが受けるダメ出しであると同時に、イエローカードでもある。あまり言われ続けるようだと、顔が赤くなったり、背筋が凍ったり、吐き気を催すだけではなく、生き残りができない。

 すなわち、イエローカードが累積してレッドカードになり、いつかクビになる。

「あまり伝えない」で、一つに絞る

 戦略コンサルでは、プレゼン資料をつくるときは「1スライド、1メッセージ」で伝えることが求められる。

 一枚のスライドで伝えることは、メッセージを一つに絞って一文で伝える。そして、メタではプレゼン全体でも伝えることも、同じく、メッセージを一つに絞って一文で伝える。すなわち、そこも「1プレゼンテーション、1メッセージ」だ。

 プレゼンだけではない、会議での議論でもそうだ。クライアントから「どう思いますか?」と聞かれたときに、いろいろと言ってはいけない。自分のメッセージを一つに絞って一文で伝えることが求められる。

 なぜ、それが求められるのか。

 いろいろ言うよりも、1メッセージで伝える方が相手に伝わるからだ。

 一つに絞って一文にして“あまり伝えない”方が伝わる。

 戦略コンサルに限らず、事業会社でもCXOなどの伝え上手の多くは、1メッセージ上手であり、1メッセージの細部まで拘っているのだ。

(本原稿は『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』を一部抜粋・加筆したものです)