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コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国経済を震撼させる「Galaxy Note7」発火事故

事態はもはや“IT立国”の信用問題に

趙 章恩 [ITジャーナリスト]
【第12回】 2016年11月4日
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リコールや損害賠償請求
サムスン電子に大打撃

 そこまでして交換した新しい「Galaxy Note7」だったが、結局、バッテリーが過熱することもなく充電にも問題はなかった。しかし、巷間いわれているように、万一発火すると自分がケガすることはもとより周りの人に迷惑を掛けてしまうことになる。そうなっては一大事だ。

 そんなこんなで、しぶしぶながら私は「Galaxy Note7」を捨て、「Galaxy S7」に機種変更した。ところが、韓国国内で販売された約55万台の「Galaxy Note7」のうち、回収されたのはわずか10%程度で、残りの約50万台近くが、いまだに国内のどこかで使われているというではないか。ちなみにアメリカでは、まだ100万台ほどがそのまま使われているそうだ。

 その一方で、訴訟を起こすユーザーもいる。10月24日、韓国で「Galaxy Note7」の購入者527人が、サムスン電子を相手に損害賠償を求める訴訟を起こした。購入者らは、端末交換や払い戻しのためにセンターを訪問した際の交通費や製品使用に伴う不安などの損害賠償金として、1人当たり50万ウォン(≒4万6000円)を要求している。

 10月18日には、アメリカニュージャージー州でも、「Galaxy Note7」を購入したユーザー3人がサムスン電子米国法人を相手に損害賠償訴訟を起こした。

 発火の恐れがあるとして何週間も電源を切ったまま端末を使えなかったにも関わらず、端末の月賦と通信料を払い続けなければならなかったこと、端末の交換がスムーズに行われずユーザーを危険にさらしたことを賠償すべきと主張した。

 このアメリカでの訴訟は、原告が勝訴すれば他の購入者も賠償金を得られる集団訴訟であるため、サムスンが負ければ莫大な賠償金が必要となるだろう。

 「Galaxy Note7」の製造販売中止で、サムスン電子の経営実績は急速な落ち込みを見せる。同社が公式に発表した「Galaxy Note7」関連の損失だけで7兆ウォン(≒6426億円)を超えるからだ。

 同社が10月12日発表した、2016年7~9月の暫定業績によると、売上は前年同期比9.06%減の47兆ウォン(≒4兆3158億円)、営業利益は、前年同期比29.63%減の5兆2000億ウォン(≒4775億円)である。

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趙 章恩
[ITジャーナリスト]

ちょう・ちゃんうん/韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。
IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「ニューズウィーク」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国の国民生活に、ITがどれほど浸透しているか、知っている日本人は意外に少ない。ネット通販、ネットでの納税をはじめとする行政サービスの利用、公共交通機関のチケットレス化は、日本よりずいぶん歴史が古い。同時に韓国では、国民のIT活用に対する考え方が、根本的にポジティブなことや、政府が規制緩和に積極的で、IT産業を国家の一大産業にしようとする姿勢などが、IT化を後押ししていることも事実である。

一方の日本は、どうして国を挙げた大胆なIT化の推進に足並みがそろわないのか。国民生活にITが浸透している韓国の先行事例を見ながら、IT化のメリットとリスクを見極めていく。

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