たとえどんなに含み益があろうとも、売却しないと実現益にはならない。しかし、人は行動経済学で言う「アンカリング効果」の影響を少なからず受ける。アンカリング効果とは、提示された数値が基準点(アンカー)となり、判断に影響を及ぼすことである。つまり、3000万円の含み益があればそれより少なくなると損をしたかのように感じる。

 こうなると、売却期限を持たない人はいつまでも夢を見るか、売り止めをする(売るのをやめる)ことが多くなる。客観的には儲かっている人なのに、欲の皮だけは突っ張っている状態が続くので、成約価格は下がりにくい。

◆図5:都心3区の成約と在庫の平方メートル単価の推移

(出典)東日本流通機構からスタイルアクト作成 拡大画像表示

自宅マンションは価格が
下がりにくい安全資産である

 最後にまとめると、次のようになる。

 自宅用のマンション価格が下がりにくいのは、新築の供給者側の「供給調整で価格は下げない」という論理と、中古の供給者側の「含み益の最大値からすると下げたくない」というアンカリング効果によるところが大きいことを見てきた。

 これに加えて、住宅ローンを借り入れる際には団体信用生命保険(死亡保険金でローンを完済する商品、略して団信)に加入するため、働き手が亡くなっても自宅の売却を余儀なくされることはない。これは、自宅用のマンション価格が市場で暴落しにくい大きな要因になり得ている。

 このように自宅資産の価値が緩やかに上昇していくことは非常に良いことだと私は考えている。なぜなら資産価値の上昇に伴い、所有資産が増加し、働かずして資産形成やキャッシュを生み出してくれるからである。資産価値が上昇することは、少子高齢化社会で働き手が減少し続けている国に残された富を生み出す有効な手段である。これは働き手でなくなった人ができるという面からも促進すべきであろう。

 不動産を持つリスクを過剰に怖れることはない。それよりも、むしろリスク管理する知恵を学習したほうが将来の備えに役立つと思う。