同書では巻末に、ジャーナリスト安田浩一さんによるマルセーラさんへのインタビューがある。この中で、安田さんは、人身取引年次報告書について「そもそも米国に他国を評価する資格があるのかといった疑問を感じる方も少なくはないだろう(私もそう感じてはいる)」と書きつつ、「だが、直接的な暴力や、暴力を用いての束縛がなくとも、自由で自律的な意志を制限することだけで、広範囲に『人身取引』『奴隷的労働』として捉えることは、いまや世界の常識なのだ」と指摘している。

 『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書/2010年)では、日本で過酷な労働状況に置かれる外国人実習生を追った安田さんに、『サバイバー』について話を聞いた。

部屋で日本人男性の顔を見た瞬間
「怖い」と言ったマルセーラ

◎『サバイバー』のあらすじ
 21歳のシングルマザー・マルセーラは、娘や母、兄弟の面倒を見ながらコロンビアで暮らしていた。貧困に苦しむ毎日の中、あるきっかけから日本で働くことを決める。仲介者を通じて日本へ入国するが、東京で待っていたのは「500万円の借金を返すまでは帰国させない」「売春婦として働き、1日2万円を支払うことができなければ借金の利子がつく」という言葉だった。マルセーラは日本に着いた日からすぐに、池袋の路上で売春婦として仕事を余儀なくされる――。

――安田さんはアメリカでマルセーラさんに取材した際、彼女から「怖い」と言われたそうですね。「日本人の男性を目の前にすると、どうしても昔の記憶がよみがえってしまう」と。

安田 最初に会ったのはモーテルのロビーでした。そのときはすごく朗らかに握手をして明るい表情だったのですが、ホテルの部屋の中に入って通訳の女性と3人になったときに、表情が急に強張って緊張した感じになったんですね。