2026年春闘における定期昇給相当込みの
賃上げ率の見通し

春闘が本格化している。大和総研では、2026年の賃上げ率を日本労働組合総連合会(連合)集計ベースで5.3%と見込んでいる。物価高や労働需給の逼迫、好調な企業業績などを背景に、前年並みの高水準となりそうだ。
注目されるのは、企業規模間の賃上げ率格差だ。25年春闘での中小企業(300人未満)の賃上げ率は、大企業(1000人以上)のそれを0.7%ポイントほど下回った。格差は前年からわずかに縮小したものの依然として大きく、1990年代前半まで格差が目立たなかったことを踏まえると、賃上げの広がりには課題が残る。
この点、25年度の中小企業の業績が堅調とみられるのは好材料だ。日銀短観の12月時点の売上高計画に過去10年の修正パターンを当てはめると、25年度の売上高は中小企業で前年比+2.4%、大企業は同+1.5%と予想される。同様に、25年度の経常利益は中小企業で同+3.9%、大企業で同+3.2%だ。中小企業1社当たりの売上高・経常利益の水準は大企業に及ばないが、伸び率では上回るとみられる。
コストの増加分を販売価格に転嫁する動きが進展していることも、中小企業の賃上げを後押しするだろう。中小企業庁「価格交渉促進月間フォローアップ調査」によると、22年9月に33%だった労務費の転嫁率は25年9月に50%に達した。
もっとも、中小企業の賃上げが十分に加速しない可能性もある。特に懸念されるのが“賃上げ疲れ”だ。賃上げ、賃下げの両方を含む賃金改定率を調査した厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、25年に賃金改定率が1%を下回った中小企業(100~299人)の割合は前年から5%ポイント上昇した。労働生産性の改善の遅れなどにより、積極的な賃上げを断念する中小企業が増加したことを示唆しており、25年春闘での賃上げ率を下押したとみられる。
中東情勢の緊迫化やトランプ米政権の高関税政策、中国による対日輸出規制などにより、外部環境の先行き不透明感はこのところ強まっている。中小企業の資金余力は大企業よりも小さく、経済ショックに脆弱だ。事業環境の悪化で、とりわけ中小企業の賃上げ率が下振れする可能性があり警戒が必要だ。
(大和総研 エコノミスト 田村統久)







