「アメリカ人はこういう政治ユーモアの遊びが大好き。クスッと笑えて、バッチのどこにもトランプと書いてない。そこがウケたの」

 ソ連との冷戦時代、17歳で自分の意志で陸軍に入隊し、除隊後は沿岸警備隊に入って軍のキャリアを歩んできた彼女にとって、政治家という存在は、決して自分が戦場に行くことなく、若い軍人たちを危険な戦場に送る人間という認識だ。現場で命を懸けるのは、常に自分たち軍人だと身にしみてわかっているぶん、政治家に心酔したり、彼らを100%信用したりすることはできないのだと語る。

支持を語らずトランプに投票した
サイレントマジョリティの底力

 そんな彼女にとって、国家機密を自宅の私用サーバーでやりとりしていたクリントンは、FBIが白と判断しても「限りなく犯罪者」であり、「危険にさらされる軍人や国民の命の重さを理解していない人」と映る。

 虚言・暴言癖のあるトランプか、国家機密の扱いに問題があり軍人をむやみに危険にさらしかねないクリントンか、その2つを比べれば、トランプの暴言の方が「言葉」だけであり「行動」ではないぶん、ダメージが少ないと判断した結果の投票だという。

 彼女は、ヒラリーのスキャンダルをネットで読み漁る狂信的トランプ支持者とは付き合いたいとも思わないし、トランプがアメリカを再び誇れる国にしてくれるなどとも1ミリも思っていないと言う。だが「銃規制を強化し、宗教の自由に制限をかけてきそうなヒラリーの政策には危険を感じる」ため、ヒラリー大統領だけはダメだと最初から思っていたという。

「怒れる白人男性がトランプを大統領にするのだと言われると、苦笑するしかない。米国民の半数は女性。その女性票なくしてこの国の大統領になれるわけがないのだから」

 陸軍で銃の修理の仕事を担当していた彼女にとって、自らと家族の身を守る銃はなくてはならないものだ。銃管理に連邦政府が規制を加えるのは、どうしても納得できない。また、女性大統領の誕生は望んでいるが「ヒラリーではない」と語る。

 声高にトランプ支持を語らず、かつ確実にトランプに投票した彼女のような層が、今回の選挙でトランプを当選させたサイレントマジョリティなのではないか、という気がしてきた。