東京でいうと六本木にあたる北京三里屯。アメリカ大統領選の5ヵ月前に、ワシントンから意見交流のため北京にやってきた学者は、多くの聴衆を前に、「民主主義制度の力を信じていただきたい」と強く求めた。
「トランプはとんでもない馬鹿者だ。アメリカでは確かに彼に関する多くの報道がなされているが、それはアメリカ人に、あの人はいかに馬鹿げているかを知らせているだけだ」と、ワシントンから来た学者は断じた。
トランプはあれほど中国を罵っていいるのに、なぜか中国の市民の中では人気がある。アメリカ人学者の言葉は、中国のエリート外交官、国際問題の専門家には物凄い共鳴を呼んだ一方で、一般市民、市民の読む夕刊紙は、トランプは面白い人物であり、このような人がアメリカ大統領になったら、常にイデオロギーで中国と対抗してきた今までのアメリカ大統領とは一味違うのではと、淡い期待を抱いている。
アメリカ人学者が馬鹿げた奴とこき下ろした人物が、11月9日に次期大統領になることが決まった。それによって中米関係もどう変化していくのか、これからの4年間はまったく予測できなくなっている。
ブラックスワンが
世界各地に舞い降りる
反主流、アンチ・グローバリゼーションは、世界各地で大きな潮流となっている。
失言というより暴言が、機関銃のようにトランプ候補の口から出ていた。彼が移民や外国人を差別するなら、アメリカにいる中国人も決してよい待遇を受けるはずがないと思われるのだが、外部に敵を作り激しく攻撃すること自体は、中国の都市部にいる住民にとって、イデオロギーなど高尚な話より分かりやすい。発展の置き去りにされているという不満を、どこかにぶつけたいという思いは、今や世界各地で共通している。