このところ、クラウドコンピューティングという言葉を聞かない日はない。日々コンピュータに触れる者にとって、クラウドコンピューティングはインターネットやweb2.0の次に現れた、進化のステップと目されているのである。

  現在、クラウドコンピューティングの市場規模は360億ドルといわれる(AP調査)。メリルリンチは、これが2011年には1600億ドル市場に成長すると予測している。つまり、3年間で急速に4倍以上膨らむという計算だ。市場に遅れてやってきたマイクロソフトすら、5年以内に収入の半分をクラウドコンピューティングから得る計画だと述べている。

 「巨額な設備投資不要」「IT人員なしでも、すぐに稼働」「使うだけ払うサブスクリプションモデル」などの売り文句が不況時にアピールするのも、注目される一要因だろう。だが、クラウドコンピューティングはそれ以上に、企業のIT運営をすっかり変え、同時にITビジネスの勢力地図をがらりと塗り替える可能性も秘めているのだ。

 クラウドコンピューティングの進出企業には、われわれもよく知っている名前が並んでいる。グーグル、アマゾン、IBM、マイクロソフト、サンマクロシステムズ、セールスフォース、EMCなど。だが、一言でクラウドコンピューティングと言っても、その内容やビジネスモデルには違いがある。

 最も身近なグーグルの例を挙げよう。インターネットでグーグルにアクセスすると、「Google apps」という一連のアプリケーションで文書作成や表計算、Gmailなどをオンライン上で済ませることができる。作成したデータは自分のコンピュータ、つまりクライアント側ではなくグーグルのサーバーに保存され、作業の続きを行いたい場合はそのデータを呼び出すことになる。すべてはクラウド、つまりインターネットの中にあるというわけだ。

 このGoogle appsは、一般ユーザー用のアプリケーションをクラウド化したものだが、グーグルは開発者向けのプラットフォーム「Google App Engine」もクラウドコンピューティングで提供している。開発者は、インターネットでグーグルのサーバーにアクセスし、そこでプログラミングを行いストレージを利用するわけだ。

  Google appsはもちろん無料だが、Google App Engineも500MBまでは無料、それを超えるストレージやコンピュテーションのパワー利用については、ギガバイトあたり、あるいはCPU1時間あたり10数セントといった利用料を払うことになる。