複雑な事情からホームレスとなった女性3人の人生を、NPO法人 抱樸代表の奥田知志が語る写真はイメージです Photo:PIXTA

ホームレスの人々を支援するために設立された認定NPO法人「抱樸」には、行き場を失った人々が日々訪れる。家庭内暴力(DV)から逃れ、妊娠中のまま身を寄せる10代の少女もいる。さまざまな事情で住まいを失った3人の女性の人生を、北九州で支援を続けてきた奥田知志理事長が語る。※本稿は、奥田知志『わたしがいる あなたがいる なんとかなる「希望のまち」のつくりかた』(西日本新聞社)の一部を抜粋・編集したものです。

家を失った17歳の少女の
お腹には赤ちゃんがいた

 ゆうこ(仮名、当時17歳)は、幼い頃から施設を転々としてきた。高校進学はできず16歳で結婚。

 しかし、幸せは続かなかった。夫の暴力から逃れるように家を飛び出し、野宿になった。おなかには5カ月になる赤ちゃん。ホームレスのほとんどは男性の中高年齢層で、金髪の17歳の女性が炊き出し会場に現れ一瞬騒然とした。

 路上に残して帰るわけにはいかず、当面わが家で一緒に暮らすことになった。

 ある日、妻が彼女に尋ねた。「ゆうこはどうしたいの」。

 何と答えるかなと思いつつ聴いていた。すると「幸せになりたい」と彼女は言った。

 失礼な話だが僕は「iPhoneが欲しい」とか言うだろうと思っていた。この答えに胸が詰まった。

 すると妻は「あなたにとって幸せってなに」とさらに問う。僕は内心「幸せで十分。それ以上質問しないでほしい」と思っていた。

 しばらくの沈黙の後、ゆうこは「わからない」とポツリ。

 その後、アパートに入居、出産。子どもが生まれて1年が過ぎた頃、ゆうこの家の電気とガスが止められた。滞納が原因だった。