アドビのデジタルメディア事業部門担当エグゼクティブ・バイスプレジデント 兼ゼネラルマネージャーを務める、ブライアン・ラムキン氏 Photo by Noriko Takiguchi

アドビのクリエィティブ製品
年間最大のイベント

 エンタープライズ・ソフトウェアがどんどんクラウドに移動しているのは、すでに周知のところだが、クリエーター・ツールでも同様の変化が加速化している。それを牽引しているのが、アドビ システムズ(以下・アドビ)だ。

 アドビは、先頃サンディエゴでクリエイティビティ・コンファレンスと銘打った年次会議『Adobe MAX』(11月2~4日)を開催し、そこで同社のクラウドサービスである「Adobe Creative Cloud」のユーザーが増加していることをアピールした。

 アドビがクリエイティブ・スイートというパッケージソフトから、クラウドへ完全に移行することを宣言したのは2013年だった。それ以降は、新製品や新機能はクラウドだけで提供するとし、一部では大きな批判も呼んだ。

 だが、現在2016年度にエンタープライズ向けサービスのライセンス数は、前年度比で43%の伸びを見せ、また全体の35%は新契約ユーザーだという。クラウド化は否応もない大きな動きとなっているのは、クリエイティブツールでも同じと言える。

「デザイン」への注目が高まっている事実もある。シリコンバレー企業は特にそうだが、現在のビジネスにはデザインがなくてはならないものになっている。以前ならアドビと言えば、デザイン事務所や社内デザイナーなどのプロが利用するものだった。しかし、今ではマーケティング部門、ソーシャルメディア部門などデザインツールのユーザーは社内でも広がっている。契約数の伸びは、そうした事情を反映しているのだろう。

クリエイティブの定義が
広がっている

 アドビのデジタルメディア事業部門担当のエグゼクティブ・バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのブライアン・ラムキン氏によると、クリエイティブ・クラウドのユーザーの3分の1は、“プロでない人々”だという。「アドビというブランドに惹かれる人々、ホビイスト、フォトショップをちょっと使ってみたいというユーザーがいる。クリエイティブとは何かの定義が広くなっている」と語る。

 一方、本来のヘビーユーザーであるプロのデザイナーらは、より速く効率的に新しいデザインを生み出す必要性に迫られている。ラムキン氏は、これを「コンテント・ヴェロシティー」と呼ぶ。デザインされたコンテンツを生み出すことの早急さが現代をかたどっており、それに対応することが求められているということだ。