遺跡発掘作業を請け負う会社で、アルバイトから入った元引きこもりの人たちが、測量もできるようになって、調査補助員になり、やがて正社員になったケースもある。採用担当者によると、実際、発掘現場の作業員には、「引きこもり」傾向のある人たちが多いらしい。

 なぜ、仕事が長続きするかというと、歴史的にも重要な意味のある、誰も見たことのないような情景が、自分の手作業で1つ1つめくられていく。そんな作業が面白くてハマってしまうのではないかという。

 それに、発掘の作業員は、あまり干渉されることもなく、自分のペースでまったりと仕事ができる。体調が悪いときには、休むこともできる。前出の番組で紹介された企業と共通する部分がかなりありそうだ。

 さらに、発掘現場には、世慣れたおじさんやおばさんといった、年齢も価値観もバラバラの雑多な社会経験をもつ人たちが数多く働いているという。そうした放っておかれているようで、実は気配りされているような環境もまたいいのかもしれない。

引きこもりを救う
“居場所”づくりと社会的役割の明確化

 無理して会社に勤めなくても、インターネットが得意な人であれば、オンラインでゲームを作ったり、ネットオークションで生活したりしている人もいる。「目利き力」があれば、ネットがそれほど得意でなくても、それなりの日銭を稼ぐこともできるらしい。

 電子書籍の時代が、これから本格到来するのかどうかはわからないが、能力があれば、新しいビジネスチャンスもありそうである。その豊かな感性や特性を生かして、ライブやアート活動をしている人たちもいる。

「おひとり様」流行りの時代。社会に背を向けて1人でひっそり死んでいくのも、また1つの選択肢だ。しかし、多くの人が、そうした能力的なものを持っているわけではないし、まだ生活の自立ができていない人たちにとっては、多かれ少なかれ、人間関係を避けて通ることができない。

 一旦、社会との縁が切れてしまった人たちは、どうすれば再び社会とつながれるのか。そのポイントは、心でつながれるような安心できる“居場所”づくりのほかに、「自分は必要とされているんだ」といった社会的役割を明確にしてあげることにあるのではないかと改めて思うに至った。


発売中の拙著『ドキュメント ひきこもり~「長期化」と「高年齢化」の実態~』(宝島社新書)では、このように、いまの日本という国が、膨大な数の「引きこもり」を輩出し続ける根源的な問いを追い求め、当事者や家族らの語る“壮絶な現場”をリポートしています。ぜひご一読ください。