よくある光景~女はいつだって大変だ

 私こと女子大生の大曽根千種は就活の前に実家に帰った。私の実家は女系家族と言っていい。正月、初もうでから帰って、暇つぶしに書棚を見ていると、一族の日記を見つけた。そこでつらつらと読んでみることにした。BGMはラヴェルのボレロを久々に聴いてみよう。

 今日、面接を受けた。仕事への熱意を語った。「女の幸せは結婚。そんなに仕事のことを言っていると、幸せでなくなりますよ」と言われた。ひどい時代だ。

 今日、面接を受けた。仕事への熱意を語った。「BG(ビジネスガール)って言うけどね、結局、みんな口ではいいこと言ってもすぐやめるんだよね」と言われた。ひどい時代だ。

 今日、面接を受けた。仕事への熱意を語った。「四大卒?あ、ごめんね~。うち、四大卒は使えないからいらないんだわ」と言われた。ひどい時代だ。

 今日、面接を受けた。仕事への熱意を語った。「説明会の開催時間は朝の8時30分です。え?その時間だと間に合わない?男子の時間と合わせてくれ?ああ、無理ですね。申し訳ない」と言われた。ひどい時代だ。

 今日、面接を受けた。仕事への熱意を語った。「女性社員って、入社前はいいんだけど、入社してから伸びないんだよね。いやあ、困ったものだ」と言われた。ひどい時代だ。

 今日、面接を受けた。仕事への熱意を語った。「女性の社長って当たり外れが大きいんですよ。あなたは役員の経験は豊富でもその辺、どうですか?」と言われた。ひどい時代だ。

 今日、面接を受けた。仕事への熱意を語った。「やっぱり言ってもね、国のトップなわけですよ。首相ってのは。その辺、あなたは女性初ということになりますが、本当に大丈夫ですか?」と言われた。ひどい時代だ。

 あれ?途中で眠ってしまったようだけど、どこまでが日記に書いてあったのか、それとも正夢か…。

※ここまでの部分はフィクションです