これはまずいな、と思った新聞記事をご紹介する。「日本経済新聞」を購読されている読者は、1月14日の朝刊1面に掲載された「個人マネー 利回り重視」と題する記事を見てほしい。「個人向け金融商品の利回りを比べると(年率)」というタイトルの比較表が付いているのだが、これがいかにも誤解を招きそうな代物だ。
表のトップには投資信託7.4%とあり、これは昨年末時点の公募投信の平均分配金利回りだという。以下、社債は0.25~3.02%で昨年発行分、株が1.82%で昨年末の東証1部平均の配当利回り、国債が0.11~0.25%とあり昨年10月発行の3年債と10年債の初回利率、定期預金が0.03~0.04%とあってメガバンクの1年物だ。これを、利回り比較の表として掲載するのはいかにもまずいのではないか。
利回りを比較する際には、利息・配当・分配金などのインカムゲインと投資元本の値上がり益(値下がり損)であるキャピタルゲイン(ロス)を合わせて考えることと、リスクの異なるものの利回りを単純比較しないことという二つの大原則がある。この比較表は、二つの原則をいずれも考慮していない。
投信の利回りが7.4%と突出して高いが、これは元本の値下がり損を考慮していない「直利(ちょくり)」だろう。記事本文には、昨年投信への資金流入が大きかったことが述べられているが、直利をもって「利回り」と称し、投信が有利な投資対象であるかのような記事を書くのは不正確だ。おそらく、金融機関のセールスマンはこの記事をコピーして客先を回り「皆さん利回りを重視されています」「高利回りの投信がトレンドです」などと言ってセールスに利用しているのではないか。