80年代の魔女狩り報道が原因か
中高年層にHIV検査への忌避感

 日本人の初HIV感染例が見つかったのは、30年前の1985年。米国在中でMSM(Men who have sex with men)の日本人男性がエイズ患者と認定されたのに続いて、日本国内の血友病患者3例のエイズ発症とMSM2例がエイズ症例と認定されている。

 続く86年11月に長野県・松本市の外国籍の女性が、その2ヵ月後の1987年1 月17日、兵庫県・神戸市で日本人の女性でエイズ発症例が報告される。国内で初めて異性間の性行為による感染が確認されたのだ。

 神戸の件では、患者の女性がCommercial Sex Workerとして不特定多数と交渉があったという「うその証言」もあり、2次感染を防止するとの口実で実名、写真付きの「魔女狩り」報道が繰り返された。同市はパニックに陥り、風俗街の客足は激減。1月18日に神戸市の各保健所に設置された相談窓口には3日間で3000人以上の相談者が殺到する騒ぎになった。

 今の中高年層はちょうど性に目覚める年頃に、一連のヒステリックで扇情的な報道に接した年代だ。そのため「エイズは特殊な状況下での特殊な病気」という誤解(無知に発する偏見ともいう)と、社会的なバッシングや実名が晒されるのではという恐怖心が根強い。HIV検査への忌避感は、この辺に由来している。

いきなりエイズの2割は
異性間の行為

 性行動が多様化している今、異性・同性間を問わず病原体をやりとりしやすい性行為を好む人は少なくない。

 どちらかが無自覚なHIV陽性者だった場合、コンドームを装着しない肛門性交のHIV感染率(推計値)は0.067%(挿入側)~0.5%(受け側)/回。同じく、膣性交のHIV感染率は0.05%(男性側)~0.1%(女性側)/回だ。粘膜と精液、血液の接触が多い肛門性交の感染率は膣性交より高く、長い間、同じ行為を繰り返せば感染リスクは確実に上昇する。

 前出の報告では、HIV感染陽性(未発症)例のうちMSM(男性間性交渉者)──例えば、結婚をしていても同性と性行為をするバイセクシュアルの男性を含め、同性間の性行為による感染は全体の69%、691人、異性間の性行為による感染は19.5%、196人だった。