規制緩和しても「混合介護」が広がらないワケ

 公正取引委員会が、9月5日に発表した「介護分野に関する調査報告書」によって、にわかに話題となっている「混合介護」。

 この報告書が出されたことで、公的な介護保険が保険外のサービスを利用することを禁止しているかのような誤解をしている人もいるようだ。だが、前回の本コラム『禁じられていない「混合介護」の推進がなぜ今叫ばれるのか』で解説したとおり、介護保険は2000年の制度創設当初から混合介護が認められている。公正取引委員会の指摘は、重箱の隅をつつくようなもので、「規制」などないも等しいのが実情だ。

 介護は、高齢者の生活をサポートするものだが、十人いれば十通りの暮らし方がある。暮らしの現場で起こるさまざまな介護ニーズを、公的な介護保険だけで賄うのは到底不可能だ。介護が必要な人の暮らしの質を上げて、多種多様な介護ニーズを満たすために、介護保険以外の社会資源を利用することは必要なことで、悪いことではない。どんどん利用すればいいと思う。

 とはいえ、現状では実費を支払って保険外のサービスを利用する人は少なく、混合介護はさほど広がっていない。それは果たして、公正取引委員会の報告書が指摘するように、「規制」が最大の問題なのだろうか。

競争政策を取り入れれば
介護市場は活性化する?

 公取委は、前出の報告書の冒頭で、今回の提言の理由を次のように述べている。

《事業者の公正かつ自由な競争を促進し、もって消費者の利益を確保することを目的とする競争政策の観点から、介護分野の現状について調査・検討を行い、競争政策上の考え方を整理することとした。

 競争政策は、事業者の新規参入や創意工夫の発揮のための環境を整備することにより、事業者間の競争を促進し、これによって、消費者に良質な商品・サービスが提供されることを確保するとともに、消費者がそれを比較・選択することを通して、事業者に商品・サービスの質の更なる改善を促すことを目指すものである。

 このような競争政策の観点から介護分野の考え方を整理することは、介護サービスの供給量の増加や質の向上が図られることにつながると考えられる》

 つまり、事業者間の競争を促せば、よりよいサービスが提供されるようになり、保険外サービスを利用する人が増加。その結果、介護市場を活性化して、介護従事者の処遇改善につながるとバラ色の展望を描いているのだ。