「ついに出たか」と業界を驚かせたのが、衛生陶器のINAXが4月に発売する「超節水ECO4」トイレ。1回に流す水の量は4リットルと、ライバルTOTOの4.8リットルを更新する世界最少水量トイレだ。
近年、両社は熾烈な節水トイレ競争を繰り広げてきた。2006年の4月にINAXが6リットル型を発売するとTOTOも同年8月に6リットル型で追随。翌年、今度はTOTOが5.5リットル型で先行すると09年にINAXが5リットル型で対抗した。
しかしまたすぐにTOTOが4.8リットル型を投入。発売から1年以上経った今、安定した売れ行きで同社の主力製品に育った。
そんなライバルを横目に、INAXは満を持して4リットル型を投入し、巻き返しを図る。
タンクレスタイプの「サティス」では特殊合金を使った電磁バネで水圧を強力化。タンクがある「アメージュZ」では、別商品で排水口に流れる音を抑えるために採用済みだった空気制御システムを節水用途に展開、かつこの空気制御システムを電動式から機械式にした。機械式にしたことで電源がない場所にも設置がしやすい。
「少ない水で綺麗に流すには、汚物が付かず効率よく中央に集める便器の鉢の形状と、しっかり洗い流し排出する水の勢いと渦の巻き方が重要」(山道明・INAX設備事業部商品開発部衛陶開発課長)。5リットルから4リットルへ2割水量を減らせたのは、既存技術を発想の転換により展開先を変え、応用する緻密な積み重ねの賜物だという。
国内に設置された水洗便器の数はおよそ7100万台。06年以降は6リットル以下が主流になっているが、過去主流だった13リットル型がまだ相当数使用されており、メーカーは節水をアピールしてリフォームを促す戦略だ。INAXでは13リットル型から4リットル型に変えると、年間約1万4700円の水道代が節約できるという。こうした節水トイレの市場規模は11年に1200億円程度になると予測されている。