ロシアは、極東開発は中国だけではなく、日本の参加でバランスを取りたいのが本音だ。ロシアは、第一期プーチン政権から、メドヴェージェフ政権時を経て、第二次プーチン政権の現在まで、日本に何度も極東開発への参加を働きかけてきた。しかし、日本は「北方領土問題」があり、何も提案してこない。これに対して、メドヴェージェフ前大統領が何度も北方領土で挑発的行為を繰り返すなど、ロシアは怒り、焦っていた(前連載第59回・p3)。

 ロシアは、「日本が極東開発に参加しないならば、韓国と組んで開発する」と繰り返し発言してきた。既に、韓国は積極的に極東開発に参加している。例えば、筆者が何度かフィールドワークしたサハリン州では、ユジノサハリンスク空港改修工事や道路建設などのインフラ整備を積極的に受注し、ユジノサハリンスク・仁川間の航空便は毎日あり、それを使った医療ネットワークの協力を進めている。サハリン国立総合大学と韓国の学術協力も盛んだ(第90回)。

 これは、朴槿恵大統領の肝いりで推進しているのだそうだ。韓国も日本同様に資源小国だ。エネルギー確保のために動いているのである。しかし、韓国政府・企業は日本より圧倒的に意思決定が速い。日本が北方領土問題で動きが取れないと、全て韓国勢に取られてしまう懸念があったのだ。だが、日本は極東開発について、危機感が薄かった。

 安倍首相は、従来の政府の方針を一転させて、極東開発に積極的に関与することを決断した。その背景には、今年起こった国際社会の激変があるのは言うまでもない。それは、「米国の孤立主義」「英国のEU離脱」など、「グローバリゼーション」から「ブロック経済化」への変化であり、それは、資源、安全保障で自立性がなく、英国における「英連邦」のような経済圏も持たない日本を、孤立した極東の一島国の地位に落とす懸念がある(第145回)。

 ただ、ブロック経済化の動きは、別にトランプ大統領の登場から始まったわけではない。既にオバマ政権時から、世界に展開する米軍の再編は始まっていた。安倍政権による「集団的自衛権限定的行使容認」、「安保法制」、「環太平洋経済連携協定(TPP)」は、米国の孤立主義の動きと、中国の海洋進出への対応なのは明らかだ。そして、ロシアの要望に応えた経済関係強化も、これらの同一線上にある。

 つまり、本連載で指摘してきたように、日露関係は「弱者(負け組)連合」なのだ(第142回)。ロシアは、急拡大する中国にシベリアを支配されないために、日本の協力が必要だ。日本は、世界の「ブロック化」の中で、孤立した一島国にならないために、ロシアと関係強化したい。約70年間進展がなかった両国の関係を、なにがなんでも動かさなければならなかったほど、お互いの弱みを補う切実さがあったということなのだ。