アウトライヤーのトランプ政権
「理念より取引」重視
2017年の世界は米国を中心として大きな変動が世界にもたらされる予感がする。1月20日に発足するトランプ政権は第二次大戦後のどの政権とも共通点の少ない「アウトライヤー(基準外の)」政権である。トランプ次期大統領の選挙期間中及び勝利後の言動や閣僚級人事を見てもアウトライヤーぶりが際立つ。トランプ次期大統領の言動は過去の慣例や伝統的政策に縛られないことを示している。
まずトランプ勝利の背景である。大方の予想に反するトランプの勝利は特に白人労働者にはリーマンショックからの不況の脱出の実感がないという強い不満や、近年の移民の急速な増加(移民排斥がピークに達した1920年代と同じレベルー人口の13%程度に達している)で雇用が奪われているという不満が背景にある。従ってトランプ次期大統領の中心課題は雇用の創出と移民の制限による「強いアメリカ」の創出であり、対外的には保護主義も辞さないという「アメリカ第一」の政策ということになる。
次に、人事である。これまで発表された閣僚級人事に驚かされるのは、国家安全保障関係は軍人出身、国務長官を含め主要閣僚は成功したビジネスマンであることである。
ここには有力政治家や学者、シンクタンク出身者といった人物の姿はない。これはビジネスマンとしてワシントン政治には無縁であったトランプ次期大統領にはそもそも政治家や学者の知己がいないということや共和党の多くの関係者が反トランプであったことだけを理由とするのではなかろう。軍人やビジネスマンは明確な目標に向けて組織をあげて注力し、結果をつくることを重視するという点も重要なのだろう。トランプ政権は結果志向の政権となると思われる。
さらに、「理念より取引」である。トランプ次期大統領が勝利してから世界の注目を浴びた三つの行動がある。安倍首相とのトランプタワーでの会談、孫正義ソフトバンク社長との会談、そして蔡英文台湾総統との電話会談である。これらはいずれも正式就任前の次期大統領としては異例の行動である。