中国は2017年秋には党大会が開催され、今後5年の人事体制を決めるという重要な時期に差し掛かる。習近平主席にとっても米国との関係の調整を行い新型の大国関係を実現したと喧伝する機会と考えるかもしれない。一方、マティス元海兵隊大将が長官に就任する国防省などは中国への警戒心は強く、米国の政策も柔軟、強硬の二面性を持つのだろう。

 中国との協力拡大のグランド・バーゲンの重要な一部は北朝鮮問題である。トランプ次期大統領は金正恩党委員長との会談も辞さないと口にしており、北朝鮮問題でカギとなる中国の協力が得られれば交渉による問題解決に乗り出す可能性がない訳ではない。北朝鮮にとってトランプ体制は怖い体制と見られている可能性がある。共和党政権は元々北朝鮮に強硬であり、新政権の国家安全保障関係者は軍人出身であり、当面核実験やミサイル実験などの挑発的行動は控え、様子見ということなのだろう。

 北朝鮮核問題の解決のためには米国が毅然とした態度をとること、中国が北朝鮮に本気で圧力をかけること、6者協議を構成する北朝鮮以外の韓、米、中、ロ、日の5か国が結束を固めることが前提となる。このような条件が整う可能性は皆無ではあるまい。ただ韓国の政治の混乱は不確実要素である。朴大統領の弾劾や次の大統領候補を巡り、国内の厳しい対立は朝鮮半島情勢に大きな影響を与えざるを得ない。いずれにせよ北朝鮮問題はイスラム過激派との対決と併せ、トランプ政権が直面する最初の安全保障課題となるのだろう。

 ロシアについては、トランプ次期大統領はプーチン大統領を度々持ち上げるが、対ロ関係を大きく変えることを目指しているのではないか。フリン次期国家安全保障担当大統領補佐官はロシアについてこれまでたびたび前向きの発言をしていることで知られ、新国務長官のティラーソン・エクソンモービル会長兼CEOは仕事を通じロシアとの関係が緊密であると評されている。ウクライナ・クリミア問題の関係でとられた対ロ制裁を解除し、イスラム過激派との戦いで協調することが念頭にあるのだろうか。ただロシアは膨大な核戦力を有し軍事的に米国と対抗できる唯一の国である。国防エスタブリッシュメントの警戒心は強い。

対ロ関係は大きく変わる可能性
中心課題はイスラム過激派との戦い

 トランプ次期大統領が政権の中心課題として繰り返し提起してきたのは、イスラム過激派との戦いである。マティス次期国防長官は中東をカバーする米国中央軍の司令官を務め、ISやその他イスラム過激派に対する強硬な姿勢で知られる。おそらくシリアでのISとの戦いに米国は正面から乗り出していくのだろう。このためオバマ政権が忌み嫌ってきたアサド政権やロシアと協調体制を組む可能性も云々されている。