チーム間の連携が
味わいの良さを実現した

 平野社長は、現場に明確な目標を与えた。「必ず中味調査(味のユーザー評価)で今までにないくらい高いスコアを出してくれ」と伝えたのだ。

「商品を出す時、言い訳や負い目があるようでは、必ず負けに終わります。営業担当者が心から『これ、おいしいですよ!』と言えなければ、営業もうまくいくはずがありません」(平野社長)。

 宮广氏の元には大きな課題が残った。果汁のフレッシュ感を損わないよう、果汁の供給体制も、チューハイの製造工程も見直さなければならなかったのだ。果汁の調達チーム、さらには研究所の多くのメンバーに協力してもらい、これまで以上に技術面を突き詰めなくてはならない。

アサヒ、缶チューハイ一人負けを打破した「もぎたて」開発秘話商品をテイスティングする宮广朋美氏(写真中)と和田華奈子氏(写真右)。組織間のスムーズな連携こそが、味わいのブレイクスルーを起こした

 ここで活きたのが、平野社長の「負け犬でいいのか?」というインパクトの強い言葉だった。中味開発を担当した酒類開発研究所開発第二部・和田華奈子氏が話す。

「これらは、私たち缶チューハイの中味開発チームだけでは改善できないものでした。原材料の手配、製造工程の見直しなどは、別の部署との連携が必要だったからです。しかし動いてみると、他部署の方たちが率先して取り組んでくれました。問い合わせても、すぐ答えが返ってきて、労力がかかることでも、すぐ対応してくれたのです」

 まず調達チームが尽力してくれた。果実をもいでから24時間以内に搾った果汁を供給してくれるメーカーを、新たに探してきたのだ。

 宮广氏・和田氏ら「工員B」は、これまで他の部署に改善を求めるなど、部門を横断した取り組みについては遠慮があったのかもしれない。Aの労力が増える、実現可能性が低くAに頼みにくいなど、様々な事情があっただろう。だが、トップの言葉でBが権限を持ち、Aが重要性を認識した結果、全体最適が図れたのだ。