安宅 16年の最大の驚きといえば、AIのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)化でした。

 これは、画像診断や自動運転といったAIの得意な機能を外部に切り出すことで、あらゆる企業がAIをサービスに活用できる時代に入りつつあることを示しています。各企業がゼロからAIを作って最適化するゲームが終了しつつあるというわけです。

 自動運転の話でいえば、今、シリコンバレーではレベル4の研究が進んでいます。16年に大きな話題となった自動運転車は、まだレベル2。それに対してレベル4の自動車には、ハンドルもアクセルもブレーキもありません。

データの力を解き放つ人材が必要
あたか・かずと/1968年、富山県生まれ。東京大学大学院生物化学専攻修士号取得。マッキンゼー・アンド・カンパニーに約11年勤務。途中イェール大学の脳神経科学プログラムで博士号取得。2008年ヤフーへ移り、12年より現職。データサイエンティスト協会理事。慶應義塾大学特任教授。経済産業省産業構造審議会新産業構造部会委員。Photo by A.S.

安宅 安全装置もないと。

 ええ、電車のように向かい合う席となっており、前も後ろもない形です。座っているだけで好きな所に行けるのです。

 タクシーのコストは人件費が8割ともいわれますので、この自動車がロボットタクシーとして走り回れば、初乗り運賃が約100円になります。さらに、無人のタクシーが路上で待機していれば、駐車スペースも不要になり、地価に多大な影響を与えかねないのです。

 1900年のニューヨーク五番街をご存じですか。(写真を示し)このように、1台だけT型フォードが走っていて、残りは全部馬車です。それが、13年後には、馬車が1台だけで、残りが全部自動車になったのです。非常に革新的なテクノロジーが生まれると風景はガラッと変わる。同様に、AIやロボットが社会に浸透するのに何十年もかからないと思います。

AIは仕事を奪う?
残る仕事とは何なのか

──レイ・カーツワイル氏が「45年にAIが人類の知能を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)を迎える」と指摘しています。これについてはいかがでしょうか。

安宅 確かにポケットに入っているiPhoneは信じられないぐらい賢い。囲碁の対局で人類最強レベルの頭脳を持つイ・セドル氏が負けた時点で、すでにAIは人間の能力を超えているともいえます。

 ですが、これはあくまで特定目的で答えを出す力の話。AIが複合的な意味や文脈を理解し自発的な意志を持って、目標設定や問題解決の枠組みなどを考えるような気配は今のところありません。

 現在は、非常に速い計算環境を持つコンピューターに、言語処理や機械学習といったアルゴリズムを実装し、目標と訓練データを与えて、AI“的”な機能を実現しているにすぎません。そのためAIのIQ(知能指数)はある意味ゼロで、人間をそのまま代替する可能性は限りなく低いでしょう。

 仕事がAIに奪われるということが話題になりますが、私は皆さんが思っているよりも多くの仕事が残っていくと考えています。