大規模な財政出動を訴えるトランプ・米次期大統領の登場もあり、世界で財政拡張への声が高まっている。日本も例外ではないが、その一方でプライマリーバランスを20年度に黒字化するという財政目標について、18年度に迫る「中間目標」が未達となる可能性が高まっている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平)
「世界的にポリシーミックス(政策の組み合わせ)の大きな潮流が金融政策から財政政策に転換しつつある」――。みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストはこう述べ、2017年の世界経済の論点の一つに、財政政策を挙げる。
詳しくは後述するが、財政状況の厳しい日本で今や見過ごされがちなのは、18年度に迎える財政の「中間目標」の未達の可能性が高まっているということだ。
過去数年、米国はじめ各先進国が取ってきた金融政策とは、言ってみれば、それぞれの中央銀行が世の中をお金でじゃぶじゃぶにすることで景気浮揚を狙う手法だ。
この「量的金融緩和」と呼ばれる政策では、中銀が国債などを買い入れることで、市場に大量のお金を流し込み、貸し出しなどの際につく利子(金利)を下げて企業や消費者がお金を借りやすい状態をつくる。その結果、企業が設備投資や雇用を増やしたり、消費者が住宅ローンを活用して不動産を買いやすくしたりして、さらには賃上げや消費拡大といった循環につなげることを狙っていた。
しかし、この金融政策を重視しすぎた結果、世界的に金利がゼロ%近辺まで下がる超低金利状態が長引き、経済底上げの効果に限界が出てきた。欧州や日本ではさらなる打開を図ろうと、銀行が「銀行の銀行」である中銀に預けるお金に付く利子をマイナスに下げる「マイナス金利政策」にまで踏み切ったが、それでも思ったほどの効果をもたらしてはいないとの声が大勢だ。
そんな流れを受け、最近では金融だけでなく各国の財政も積極的に活用していこう、との機運が高まってきている。財政政策とは、政府が経済対策の一環で予算を増やし、公共工事や消費活性化などに用いて、景気を持ち上げようとすることだ。米国では、大規模な財政出動を訴えるトランプ氏が米大統領選挙に勝利した。
世界で財政拡張への声が高まることに対して、日本も無関係ではない。こうした経済政策の潮流を踏まえると、政府が掲げる財政の「中間目標」が未達となる公算が大きくなっているのだ。