亭主が「元気で留守」のうちに
妻は自宅で酒浸り

「ウッ、オェッー」

 早朝のトイレ。

 背中を丸め、便器に顔を突っ込むようにして、恵子さん(仮名・32歳)は吐き続けていた。

 といっても、胃の中はすでに空っぽ。あとはもう、レモン色の胃液しか出てこないのだが、胃袋をぎゅーっと搾り上げるような痙攣が止まらない。

 喉の奥に指を入れ、最後の一滴まで吐ききった後はよろよろと布団に向かい、もぐりこむ。頭痛とめまいでうんうん呻っているうちに時は過ぎ、夫の進一さん(仮名・33歳)が起き出した。

 簡単に朝食を済ませて身支度をし、「また二日酔いか? 気楽なもんだな」と言い捨てて出て行く進一さん。

 (気楽だなんて、そんな気楽なもんじゃない)

 反論したくなるが、具合が悪くて、それどころじゃない。

 寝返りをうつと、今度は小さな手が頭を撫でてきた。愛おしい感触。

「ママ、大丈夫。苦しいの?」

 5歳の息子だった。