経済運営にリスク
中国の覇権強化を目指す習近平

 習近平の声明には、「中国を中心に世界秩序を整備する」との意思が込められている。端的に言えば、強大な軍事力と経済統率力を基に、中国が“世界の盟主”の役割を果たしていくべきとの考えだ。特に、海洋進出に関するフィリピンなどとの対立を振り返ると、近年の中国は“力の論理”こそが中国の覇権を支え、「世界が安定と繁栄を享受する手段」と考えている。

 すでにハーグの常設仲裁裁判所は、「中国には南シナ海での領有権を主張する法的根拠はない」との裁定を出した。そうした国際社会の批判にもかかわらず、中国はこの裁定を批判している。ここから、中国は「国際社会こそが自らに従うべき」と考えていることがうかがえる。

 経済運営に関しても、中国は共産党の力が市場原理に勝ると考えているようだ。2016年年初、世界の投資家は人民元の急落と本土株式市場の急落に見舞われた。この時、中国政府は為替介入によって人民元の売り圧力を抑制しようとした。特に、市場参加者を驚かせたのは政府が株の売却を禁じたことだ。そこには、多様な市場参加者の意思に基づく市場原理さえも、共産党政府の支配下にあるとの発想があったように思える。

 とはいえ、さすがに経済と金融市場を意のままに操縦するのは困難だろう。現に、経済成長率は右肩下がりで推移している。2016年12月の中央経済工作会議では、経済の安定を実現するために「積極的な財政政策」と、「穏健かつ中立な金融政策」を進めることが示された。短期的には経済は安定し、景気のハードランディングは回避できるかもしれない。同時に、鉄鋼や石炭業界での過剰生産能力は残り、不動産バブルの崩壊や信用リスクの上昇懸念も高まっている。その中で、政府が思う存分に経済・金融市場をコントロールするのは無理がある。

 そこで、経済運営のリスクをカバーする意味でも政治は一段と重要になる。習近平は国際社会での覇権強化を進め国内での求心力を維持する必要がある。秋に共産党の党大会が開かれ習政権が2期目に入ることからも、支配体制の強化のために腐敗撲滅を進め、アジア各国への関与を強化する可能性は高い。

懸念される米国と
中国の利害対立

 特に、中国の海洋進出は一段と活発化する可能性が高い。習近平が謳う“平和的発展”のためには、中国が影響力を行使できる地理的な範囲の拡大が欠かせない。すでに2016年末には中国初の空母「遼寧」が太平洋を航行した。元日からは、遼寧から艦載機の発着訓練が展開されるなど、南シナ海、台湾への実効支配を誇示する動きが活発化している。今後も海洋進出を通して中国は需要の囲い込みを行うだろう。そこには米国の出方をうかがう目的もあるはずだ。