この際、患者の重症度や年齢、入院の原因以外に持っている病気など患者の特性と、医師の特性(年齢、出身医学部など)、入院している施設をそろえるなど、結果に影響を与えそうな条件を補正したうえで比較を行っている。

 条件を補正した後の30日死亡率をみると、女性医師の担当患者は11.1%、男性医師は11.5%、再入院率はそれぞれ15.0%と15.6%で、女性医師が担当した患者のほうが死亡率、再入院率ともに「統計学的に有意」に低いことが判明したのだ。

「どうせ、女性医師のほうが軽症患者を診ているんだろう?」という疑いの声が聞こえてきそうだが、同調査はこうした批判を事前に想定し、米国特有の職種である「ホスピタリスト」のデータも分析している。

 ホスピタリストとは、入院患者の診療しか行わない病棟勤務の内科医のこと。勤務時間内に入院した患者を順番に担当するので、軽症患者を意識的に選ぶことはできないし、逆に「この先生がいい」と患者が医師を指定することも不可能だ。どの医者が誰を担当するかは「くじびき」のようなもので、必然的に各ホスピタリストが担当する患者の重症度は同じレベルにそろうと考えていい。

 この結果、対象をホスピタリストに限定した場合でも女性医師が担当した患者の30日死亡率は10.8%、男性医師では11.2%、再入院率は女性医師14.6%、男性医師15.1%とこちらも「統計学的に有意に」女性医師のほうが低かったのである。

 実はこの「統計学的に有意に」がミソ。つまり、偶然や計算上の誤差では説明がつかない「明らかな理由」で、女性医師に担当してもらったほうが命拾いする確率が高い、ということが示されたのだ。

 研究者の一人が「この死亡率の差が真実であれば、仮に男性医師が女性医師なみの医療を提供すれば、メディケアの対象者だけでも年間3万2000人の命を救える」とコメントしたこともあり、日本と同じく「男性医師>女性医師」と見なす米国では、調査結果が公表されたとたん、ワシントンポスト紙、ウォール・ストリート・ジャーナルなど米国の一般紙がこぞって取り上げる騒ぎになった。

 いったい男女の違いの何が、明らかな有意差につながったのだろうか。