安倍首相はG7最初の
懐古趣味的ナショナリスト

「懐古趣味的ナショナリズム」を打ち出すのは、トランプ氏だけではない。中国の習近平国家主席やロシアのウラジーミル・プーチン大統領も「強い国家の復活」をアピールしてきた。英国のEU離脱でも、「英国を欧州一部ではなく、世界屈指の大国だった時代への懐古」を訴えた「離脱派」が勝利した(第134回)。

 EUでも昨年、イタリアではマッテオ・レンツィ首相が国民投票で敗れて退陣に追い込まれた。今年も、フランスの極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペンが大統領選に勝利する可能性があり、ドイツやオーストラリアなどで極右政党が支持を増やしている。懐古趣味的ナショナリズムは、いまや世界的な潮流となっている。

 昨年、懐古趣味的ナショナリズムの勢いによって、英国、イタリア、米国と3人のG7首脳が交代した。今年のフランス大統領選、ドイツ総選挙の結果によっては、更に懐古趣味的な首脳が登場する可能性がある。

 安倍首相は、G7の首脳で古株のほうになった。今年、既に大統領選に出馬せず、退陣する意向を表明しているフランソワ・オランド仏大統領に続いて、総選挙でアンゲラ・メルケル独首相が退任に追い込まれる可能性が取りざたされている。安倍首相は一挙に最も古株の首脳となる可能性がある。

 だが、安倍首相はナショナリズムに対抗する「自由民主主義陣営」の「最後の砦」というわけではない。「美しい国、日本」「日本を取り戻す」と訴えてきた安倍首相は、むしろG7で最初に登場した「懐古趣味的ナショナリスト」なのではないだろうか(「5つのポイントで占う2015年」)。

アベノミクスは
懐古趣味的な経済政策だ

 実際、安倍政権は2012年12月の発足以来、「懐古趣味的」な経済政策を続けてきたと考える。この連載で指摘してきた通り、金融緩和・公共事業で株高・円安に導き輸出産業に一息つかせる「アベノミクス」は、つぎ込むカネの量が異次元だというだけで、旧態依然たるバラマキ政策である。それは「失われた20年」の緊縮財政と改革に疲れた国民に、単純に「高度成長の夢よ、もう一度」と思わせるものだった(第129回)。

 だが、政権発足から4年経ったが、結局経済は復活しない。異次元緩和「黒田バズーカ」の効き目がなければ、更に「バズーカ2」を断行し、それでも効き目がなく、「マイナス金利」に踏み込んだ。これは、「カネが切れたら、またカネがいる」という、かつて何度も繰り返されたことと全く同じである(第133回・p2)。