わが国にとって、そうした韓国政府の方向の変更は、アジア太平洋地域諸国との連携を進めるチャンスになるはずだ。トランプ次期大統領の下、アジア太平洋地域の安定がどのようになるかは不透明だが、わが国をはじめアジアの各国は、米国との安全保障を基礎にして連携を進めていくべきだ。

 韓国の政治を考える上で、最も注意すべきポイントはリーダーシップの欠如だ。事実上、朴槿恵政権が行き詰った中、政治家の関心は次期大統領選に向かっている。その中で冷静に外交問題に対処し、中長期的な視点で必要な対策を進めることは難しいかもしれない。今後も、韓国の政治家からは日韓の合意を無効にすべきとの一方的な主張が出される可能性は残る。

 しかし、わが国は、韓国からの一方的、かつ、感情的な主張に応える必要はない。

 まず、少女像の設置など韓国が一方的に主張する問題に関して、わが国は国際社会の常識が通用しない国を相手にしているとの認識をしっかりと持つことだ。その上で、政府間の合意は政権が代わっても遵守されなければならないとの姿勢を貫く。

 同時に、自国の対応が正当であるとの理解を国際社会から取り付け、数の面でもわが国の正しさを示すことに注力する。それが国際社会の常識を理解した大人の対応だ。その一方で、時間をかけて韓国の政治、世論動向を見極めるのが現実的だろう。

 駐韓大使の一時帰国に合わせ、日韓スワップ協定の協議中断、日韓ハイレベル経済協議の延期も決定された。いずれも、韓国経済の安定には不可欠だ。韓国が冷静に自国の置かれた状況を認識し、国際社会の常識を理解するまで、わが国は静かに状況を見守ればよい。

 その間に、アジアを中心とした経済外交を進め、親日国を増やして多国間での経済連携を進めるべきだ。その意味で、韓国の“駄々っ子”ぶりが露呈するのは、わが国の外交にとってプラスの作用をもたらすことになるかもしれない。

(信州大学教授 真壁昭夫)