3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)。世界最大級となるマグニュード9.0の極めて強い地震となり、その地震に連動した大津波の発生によって、人的被害は未曾有のものとなっている。また、今回の地震は工業地帯を含む東北・関東地方の広範囲に被害を及ぼしているため、日本経済にも大打撃となることが予測される。では、実際にこの地震はどれほどの経済的損失をもたらすことになるのか。そして、景気回復基調に向かっていた日本経済にどのような悪影響を与える可能性があるのか。これまでも地震が経済や財政に及ぼす影響について分析をしてきた一橋大学大学院経済学研究科・佐藤主光教授に今回の地震で予測される経済的インパクトを試算してもらった。

短期的なマクロ経済への影響は限定的か
中長期的には財政悪化の可能性も

――まだ被害の全貌も明らかになっておらず、混乱した状況が続いているが、甚大な被害を広域で受けた東北地方への経済的なインパクト、また日本経済全体に対する短期的・中長期影響について、どのように試算しているか。

佐藤主光(さとう・もとひろ)
一橋大学大学院経済学研究科教授

 私の共同研究者である一橋大学経済研究所の小黒一正准教授とともに、東日本大地震のマクロ経済への影響を試算した。ただし、今回の試算は、これまでも発生が懸念されている(津波を伴う)東南海・南海地震の被害想定をベースに、大まかな範囲の被災地の県内GDP比で調整をしたものになる。試算手法の詳細は佐藤主光・小黒一正(2011)首都直下地震がマクロ経済に及ぼす影響についての分析 経済分析184号 2011年1月を参照いただきたい。

 また、道路等の公共インフラの毀損や企業間のサプライ・チェーンの断絶、そして現時点で懸念の高まっている原子力発電所事故や電力不足の影響は反映していない。そして、直近の景気の回復も折り込んでいない。あくまで「粗い試算」になる点をご了承いただきたい。