電力需要の抑制のためには、家庭を対象とするだけでは十分でない。全体の需要の中で家庭は3分の1ほどの比重しか占めていないので、法人の需要抑制が重要な課題だ。
今年夏の電力不足は不可避であり、計画停電方式で対処しようとすれば、さまざまな不都合や混乱が生じる。医療機関の問題はすでに述べたが、工場でも1日のある時間帯が停電になると、効率が著しく落ちる。しかも、再立ち上げ時に電力消費が多くなるので、全体として節電にならない可能性もある。したがって、計画停電方式以外の方法を見出すことは、喫緊の課題である。
そこで、今回は法人需要の問題について考えることとする。
以下の議論には若干テクニカルな内容も含まれているが、要点はつぎの2つだ。
(1)計画停電方式でなく、価格で需要をコントロールする方が望ましい。ピーク時対応は家庭の場合より効果的にできる。
(2)経団連が言うように上限を決める方式では、守られない可能性もある。違約金のシステムを活用すれば、上限を強制することができる。
なお、法人需要にどの程度の削減を求めるかは、今後の供給能力の回復を見つつ、家計用需要との適切なバランスを考慮して決定すべきだ。それに応じて、料金体系の具体的な形を定めるべきである。
法人の電気料金体系
法人の場合、需要家の事業の性質などに応じて、さまざまな料金メニューがある(東京電力の場合の詳細は、「高圧・特別高圧の電気料金メニュー」を参照)。
ここでは、工場などを対象とした高圧電力(契約電力500kW以上)の場合を取り上げよう。その計算式は、つぎのようになっている(注1)(注2)。
①料金=基本料金+電力量料金
②基本料金=料金単価×契約電力
③電力量料金=「夏季」または「その他季」の料金単価×使用電力量