あまりに円高強調のコメントばかりがメディアを流れる状況を見かねた私は、米大統領選が迫る10月になって、連載コラムで「トランプリスクは幻影である」と主張した。そこで私は、為替アナリストたちが空虚な円高リスクを強調し、それをメディアが拡散することで、むしろ逆に円安転換の際の投資リターンを膨らませるのに一役買っているかもしれないと書いた。要するに「彼らが騒いでいるうちはむしろ安心」というわけだ。
これはもちろん半分皮肉だったが、半分本気だった。そして、事実そのとおりになった。あの記事を参考に投資した人がいれば、多少はおいしい思いができたはずだ。
最後にもう一度まとめておこう。
[通説]「トランプ大統領なら100円割れの円高になる」
→→→【真相】否。日本だけの異常な予測。「真逆」が正しい。
アライアンス・バーンスタイン株式会社 マーケット・ストラテジスト。1971年生まれ、仙台市で育つ。1994年、東京大学経済学部を卒業後、第一生命保険に入社。その後、日本経済研究センターに出向し、エコノミストとしてのキャリアを歩みはじめる。第一生命経済研究所、BNPパリバ証券を経て、2003年よりゴールドマン・サックス証券シニア・エコノミスト。2008年よりマネックス証券チーフ・エコノミストとして活躍したのち、2014年より現職。独自の計量モデルを駆使した経済予測分析に基づき、投資家の視点で財政金融政策・金融市場の分析を行っている。
著書に『日本人はなぜ貧乏になったか?』(KADOKAWA)、『「円安大転換」後の日本経済』(光文社新書)などがあるほか、共著に『アベノミクスは進化する―金融岩石理論を問う』(中央経済社)がある。