「史上最悪の米大統領」で、
世界の株価が上がる不思議

ところが、欧州で金融市場の取引がはじまる時間帯になると、マーケットの雰囲気がガラリと変わり、欧州株式市場の下げ幅はすでに縮小していた。トランプ当選のショックから一夜明けた9日の米国でも、株式市場は午前中(東京時間で9日深夜)から上昇に転じ、その日だけでダウ平均株価は約257ドル高(1.4%)と大きく上昇。

1ドル101円台前半と大きく円高に振れていた為替市場も、欧州時間には103円台、米国時間には105円70銭と、むしろ前日終値よりもドル高・円安で取引を終えたのである。この値動きが日本におけるトランプ相場の序章となり、東京時間の翌10日からは円安・株高が大きく進むことになった。

ドル円相場(2016年)―安全通貨・円が買われて円高になるはずが…「真逆の動き」が起こった

「『トランプ大統領の米国』へのリスク意識が高まった結果、米ドルが手放され、安全資産である日本円が買われる。だからますます円高が進む」
これが多くの人が共有していた「トランプショックのもっともらしい説明」だっただろう。これに納得していた人からすれば、11月10日からはじまった円安・株高はかなり意外に感じられたはずだ。「え?トランプなのになぜドル高・株高に?」―そんな声があちこちから聞こえた。

日経平均株価の推移(2016年)―円安につられる格好で日本株も急上昇を見せ、年初来最高値を記録した

ここで再び強調しておきたいのが、この「反転」がわれわれにとってはさほどのサプライズではなかったということだ。むしろ、選挙直後に起きた一時的な円高・株安は、絶好の投資機会だったと言えるだろう。

では、このときわれわれは何を考えていたのか?ごくシンプルに説明しよう。