トランプ大統領の経済政策が本格始動すれば、日本経済にも当然影響は出てくる。そうなると当然、私たちも「お金に対する考え方」をシフトさせていかなければならない。「トランプ相場」の到来を的中させた外資系金融マーケット・ストラテジストの村上尚己氏は、これについてどう考えるのか? 注目の最新刊『日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?』から一部をご紹介しよう。
これまでは「何もしない」のが賢明だった
この連載ではこれまで「トランプ大統領の経済政策」が日本経済にどのような影響を与えるのかを分析してきた。経済政策の大転換が進めば、当然のことながら、私たちを取り巻く経済環境も大きく変わっていくだろう。そうなれば私たち日本人も、お金との向き合い方について考え直さねばならなくなる。
これまでのようにデフレが長引く状況であれば、個人の資産は現預金を中心にするのが最も合理的だった。なんと言ってもデフレとは、マネーの価値が上がっていく経済現象なのだ。いくら政府や官庁が「貯蓄から投資へ」などと旗を振ろうと、現金にこだわり続けるのが最も賢い選択である。株式や外貨などのリスク商品に手を出すより、どれほど低金利だとしても預貯金に回すほうがいい。デフレ下に人々がこうした行動をとるのは、経済学ではわかり切ったこと、基本中の基本である。
一方、アベノミクス再起動が進めば、日本では緩やかなインフレを前提とした経済状況が訪れるだろう。そうなると、お金を貯め込むことに合理性はなくなる。放っておけば現金はどんどん価値を失っていくからだ。より豊かな生活のための消費に回したり、預金よりもリスク/リターンの高い投資も検討したりしながら、自らの資産を活用・運用するという発想が必要になってくる。ふつうの経済状態の、ふつうの国になるとは、そういうことなのである。
※参考
「日銀=手詰まり」論は誤り。注目すべき2政策とは?
https://diamond.jp/articles/-/116547
なぜ「トランポノミクス」が日本経済の追い風になり得るのか?
https://diamond.jp/articles/-/116556