歳をとっても頭が冴えている人とそうでない人、その差はどこで生まれるのだろうか。じつは近年、脳の健康には意外なものが深く関わっていることがわかってきている。医師で老年医学・栄養科学の専門家であるガブリエル・ライオン氏が書き、世界20か国以上で続々刊行されている『筋肉が全て━━健康・不老・メンタル、人生のすべてが変わる唯一の方法』からヒントを紹介しよう。(ダイヤモンド社書籍編集局・三浦岳)

同じ歳でも「頭がずっと若い人」と「老けていく人」の決定的な1つの違いPhoto: Adobe Stock

筋肉と脳の関係を知っているか?

 年齢を重ねても記憶力が衰えず、頭の回転が速い人がいる一方で、物忘れが増え、認知機能が徐々に低下していく人もいる。

 この違いはいったいどこから来るのだろうか。

「頭を若く保つには、読書や脳トレが欠かせない」と思うかもしれない。しかし、医師で老年医学・栄養科学の専門家であるガブリエル・ライオンによる『筋肉が全て』は、まったく異なる事実を提示している。

 著者は、筋肉量が非常に重要だと指摘するのだ。一見、筋肉と脳は無関係に思えるかもしれない。しかし、最新の医学研究によれば、筋肉の量と質は私たちの脳の健康とつながっているという。

 著者は、認知症や記憶障害の根本原因が「単なる加齢」ではなく、「過剰な脂肪」と「筋肉の不足」にあると指摘し、次のように述べている。

 6583人の腹部直径を長期にわたって測定したある縦断的研究では、腹部直径が最も大きい観察対象者は最小の参加者に比べて認知症を発症するリスクがほぼ3倍高いことが明らかになった。
 体重過多は、それだけで記憶障害のリスクを大きく高めることが判明したのだ。
 年を取ったら記憶力が衰えるのは仕方がないと考えられているが、私は、記憶障害は年齢より骨格筋の少なさに関連があると考えている。
 中年になったら体力が衰えるのは当然だとあきらめるのをやめたら、筋肉と記憶障害の関係がより明確になるかもしれない。――『筋肉が全て』

「筋肉を動かす習慣」の有無が差を生む

 運動不足で脂肪が増え、筋肉が減って代謝が乱れると、脳は深刻なダメージを受ける。実際、過体重の人ほど脳の容積が小さいという研究結果もあるほどだ。

 しかし、筋肉を鍛えればこの事態は確実に防ぐことができる。

 運動によって筋肉が収縮すると、「マイオカイン」と呼ばれる物質が放出される。これが血液に乗って脳に働きかけ、神経細胞の成長や修復に関わるBDNFの生成を促すと考えられている。つまり、筋肉を動かすことは、体だけでなく脳の健康や学習能力、記憶力の維持にも役立つのである。

 記憶力の低下や脳機能の損傷は、一度起こると元に戻すのが難しい。

 だからこそ、いつまでも脳を守るには、毎日体を動かして「筋肉の鎧」を保守し続ける必要がある。生涯、明晰な頭脳を保ちたいと願うなら、座って「脳トレ」ばかりしていては危うい。いますぐスクワットを始めよう。難しいならウォーキングでもいい。とにかく、毎日体を動かす習慣を身につけよう。

(本記事は、ガブリエル・ライオン著『筋肉が全て━━健康・不老・メンタル、人生のすべてが変わる唯一の方法』に関連した書き下ろし記事です)

ガブリエル・ライオン(Dr. Gabrielle Lyon)
医師(DO)
イリノイ大学で栄養科学の学部課程を修了後、セントルイス・ワシントン大学において老年医学・栄養科学の臨床・研究フェローシップを修了。健康、パフォーマンス、老化、疾病予防におけるタンパク質の種類および摂取量の実践的応用に関する分野の専門家、教育者として活躍している。筋肉についての最新研究を網羅した本書は全米で大きな話題を呼び、ニューヨーク・タイムズベストセラー、ウォール・ストリート・ジャーナルベストセラー、USAトゥデイベストセラーとなり、世界各国での刊行が続いている。