それは、政権の致命傷になりかねない。すでに米国の一部有権者の間では、トランプ大統領の辞任を求める署名が進んでいるという。今後は、米国の民主主義が政権の誤りを正すことができるかが問われる。その動きが本格化するまでの間、わが国は正しいことを冷静に主張し、アジア各国との関係強化などを進める必要がある。

「唯我独尊」の大統領令の
背景とその影響

 正式な就任から10日程度しか経っていないにもかかわらず、トランプ大統領の実態が明らかになってきた。一言でいえば、“唯我独尊”だ。自分が正しいと思えば、誤ったことでも平気で進めてしまう。トランプ大統領の政策運営にはそうした危うさがある。

 なぜ、そうなったのか。いくつか理由が考えられる。トランプ氏は、「米国の利益だけを主張すれば人気は保てる」と考えているのかもしれない。また、「大統領になったからには、やりたい放題できる」と、裸の王様のように考えてしまっている可能性もある。いずれにせよ、これまでの政権に比べ米国の内向き志向は顕著だ。

 トランプ氏の行き過ぎを諌める側近もいない。これは縁故などを重視した人選の弊害だろう。「自分は人気者だ、何でもできる」という本人の誤った認識と、政策を客観的にフィードバックする「組織の機能不全」が重なり、トランプ政権の暴走は続くだろう。

 こうして、当初の入国制限に関する大統領令は永住権者の入国さえも制限した。憲法違反との見方が出る可能性は否定できない。実際に大統領令に反対したイェーツ司法長官代行が解任されるなど、トランプ政権には「司法権の独立」を尊重する雰囲気すら感じられない。

 すでに国連の関係者からも入国制限を批判するコメントが出ている。イランは米国に対する報復措置の検討を表明した。そして、同国は中距離弾道ミサイルの発射実験を行うなど、トランプ大統領の政策は国際情勢の不安定化にもつながる恐れがある。

 オバマ政権時の政府関係者からは、過去30年ほどのテロ事件において、ビザの発給が停止された7ヵ国の出身者が「米国民を殺害したケースはない」と述べている。その指摘が正しいとすれば、トランプ氏は間違った政策を行っている可能性が高い。それでもトランプ大統領は入国制限への批判はメディアが悪いと、一向に自らの過ちを認めようとはしていない。