東アジア地域のほぼすべての国にとって中国は最大の経済パートナーとなっている。これらの国々は中国の攻撃的な海洋政策に不安を感じ懸念を増しているし、米国や日本との関係を強化したいと願っていることは自明である。しかし、このことは日米が中国と緊張を激化させることを望むことではない。中国が地域で抑制された行動を取るよう、日米が「うまく」やってほしいということなのだろう。

 第四に、その対中政策である。トランプ大統領は日米首脳会談の直前に習近平国家主席に書簡を送り、電話をし、従来の言動から一変し、「一つの中国」政策を尊重すると述べた。まさに日米同盟関係を強化し中国への抑止力とするとともに、中国にも関係改善を図りたいという積極的なメッセージを送ることを意図したのだろう。即ち、上に述べたとおり、中国との関係を「うまく」やっていくということに尽きるのだろう。

 米中関係が今後どうなっていくかはこの地域の安定にとっての最大の関心事である。閣僚の承認公聴会などでは中国に対する厳しい立場が目に付いたし、米国の膨大な対中貿易赤字に鑑みれば米中貿易戦争を予言する人々も多い。世界1、2の経済規模を持つ米中の貿易関係の収縮は世界経済に大きな悪影響を与える。他方、場合によっては米中経済関係や南シナ海あるいは北朝鮮問題を含め米中の大きな合意(グランドバーゲン)が排除されているわけでもない。これは地域にとって好ましい影響を与えるのだろう。

日本は対中政策を転換せよ

 日本はこの際、対中政策を転換するべきである。日米安保条約が健全に機能すれば中国を恐れる必要はない。これは政府が意図したことではないのかもしれないが、日本の行動の多くは「対中牽制」であるというパーセプションを生んでいるのは全く好ましくない。安心して中国と共存していく環境を整えることが日本の国益に資する。日中がウインウインの協力関係構築を目指していくことを高いレベルで確認し、具体的協力に踏み込んでいくべきではないか。

 もちろん日中二国間でもよいが、筆者はかねてより、信頼醸成・貿易投資・金融・環境・エネルギーなどの重要機能について機能にもっとも適した国々の枠組み(例えば信頼醸成であれば当面北東アジア信頼醸成として日米中韓露、環境であれば東アジアサミット参加国など)を構築し協力を進めていく「重層的機能主義」を提案している。日本は積極的に米国や中国を地域の協力に取り込んでいく努力を行うべきだろう。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)